東大志望者への推薦図書から見える、「解ける」から「分かる」への重み郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)

» 2012年02月09日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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歴史視点、動機の共有から

 「各科目が持つ歴史を追体験します。例えば、ベクトルという概念がいつの時代から始まり、誰がそれを欲しいと思い、なぜそう思ったのか? その動機をみんなが共有できるようにします。

 講義ではその当時の歴史を語ります。ベクトルの理解が進んだら、「じゃあ1つ作ってみよう」となります。ベクトルとベクトルの掛け算を内積と呼びますが、「内積とはカクカクシカジカ」と決めつけても面白くない。そこで「好きに積を作っていいよ」と言います。すると、みんな「積って何だっけ?」と根本を考え出すんです。「2×3は6だよなあ……それってどういう意味なんだろう?」とね。答えは数学の定義も出て来ますし、そうじゃないのも出てきます」

 数学のクラスはステップや習熟度でなく“フィールド1〜5”で分かれる。前後する部分も多々あるがあえて分ければ、フィールド1では紀元前から1200年まで、2と3でデカルトの手前の1500年ごろまで、4では1700年、5で1800年の数学を扱う。歴史に潜んだ“動機”から数学を理解する。根本から考える思考、「ため」を養うのである。

“分かる”は学年別にやってこない

 数学、物理、化学、生物、英語、現代文、歴史など36講座は大きく基礎コースと受験コースに分かれる。受験コースは「1年で片付ける」(力があれば1年以上かける必要なしという考え)、基礎コースは歴史からの概念把握をしっかり。いずれも“無学年制”で中1から社会人までが学ぶクラスもある。

 「“分かる”と“解ける”は違います。“分かると解ける”も“解ければ分かる”も大ウソです。分かっていても全然解けないこともあるし、解けてもまったく分かっていないこともあります。分かって解けて、解けて分かる。本来ダブルループのように循環して補い合うべきものです」

 基礎コースは“分かる”を重点に置き、受験コースは“解ける”に重点を置く。どちらも必要だが、特に社会人は“解ける”ばかり追っていないだろうか?

 毎年数人のヴェリタス講師募集に、名だたる予備校や学校の先生たち100〜200人から申し込みがある。5次まである試験は1次で10分の1以下になる。それは塾や学校の先生自身が「分かっていない」から。大半の学校も塾も「解ける」メソッドを叩きこむ。分かったフリをして受験に臨ませる講師ではヴェリタスでは務まらない。

 「公教育を良くするのが私たちの願いです。教室で起きていることは社会の縮図です。ビジネスの世界でも起きること。良い学習とは何か? クリエイティビティとは何か? 教室の中を少しでも良くすることで社会は変わっていくものだと考えています」

 ヴェリタスの3つの理念は率直さ・誠実さ・等身大さである。率直さとはボソっと「これ、分かんなくね?」と言えること。誠実さはそれを隠さないこと。等身大さとは、自信過剰でも自信欠乏でもいないこと。「分かる」の根源に立ち返って、自分の仕事を組み立て直したいと思った。

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