凍えるヨーロッパで、路上生活者はどのように暮らしているのか松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年02月08日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 シベリア寒気団が張り出した影響で欧州は半世紀来の寒さに凍えている。1月まで暖冬だったため「もしかしたらこのまま春になる?」とも思ったが、その考えは甘かった。チェコ南西部はマイナス38度まで下がり、ローマは26年ぶりの本格的な雪。地中海に浮かぶ常夏の保養地マヨルカ島も氷点下を記録するなど厳しい寒波が続く。欧州全域で死者が300人を超え非常事態に突入するなか、路上生活者の命を守る活動も活発化している。

氷の張った池で休む水鳥

 ドイツの気候は大雑把にいって「北海道と同程度」と考えていただきたい。ただし積雪はずっと少なく、乾いた寒さが特徴だ。

 ドイツ社会はほぼすべてが「寒冷地仕様」になっているものの、マイナス20度を下回る寒波が来ると社会機能はかなり麻痺する。クルマのエンジンがかからない、線路のポイントが凍結し列車が動かなくなる、港が凍って砕氷作業が必要になるなど。

 一方、寒さがうれしい業種もある。ウインタースポーツや服飾業界はもちろん、アイスワイン(Eis Wein)用のブドウ栽培農家は、毎冬、気温が下がることを心待ちにしている。アイスワインは凍結による果実成分の濃縮を待ってブドウを収穫し、搾汁して醸造する甘みの強い高級ワインだ。ドイツやオーストリアを主な産地とし、醸造できる量が少なく冬の気候次第で生産できない年もあることから価格は高い。

厳冬のブドウ畑
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