政治家を逃がしてはいけない――今、記者に求められること河野太郎氏が、原発報道を語る(後編)(1/3 ページ)

» 2012年02月08日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 福島第1原発の事故を受け、政府は大混乱に陥った。二転三転する情報に、恐怖を感じた人も少なくないはずだ。

 原発事故後の政府の対応で、何が問題だったのだろうか。また政治家に対する取材で、メディアに何が足りなかったのだろうか。衆議院議員の河野太郎氏が語った。

 →海外メディアにあって、日本メディアにないもの(前編)

・本記事は2月1日に開かれたシンポジウム「原発報道とメディア」(主催:毎日新聞労働組合 ジャーナリズムを語る会)の講演内容をまとめたものです。

原子力ルネッサンス

――原発について、世界と日本はどのような違いがあると思われますか?

自民党衆議院議員の河野太郎氏

河野:日本では「原子力ルネッサンスだ」(温暖化対策として、原子力の役割を再評価する動きのこと)と騒いでいるときがあったが、実は世界ではそんなことは起きていなかった。

 昨年、私はトルコに行ってきた。「原子力ルネッサンスに福島第1原発の事故はどのくらい影響を及ぼしたのか」という議論があったが、「何も影響を及ぼしていない。なぜなら『原子力ルネッサンス』というのは、最初からなかったからだ」といった答えが返ってきた。

 ここ10年ほどで、世界は再生可能エネルギーにかなり投資をしてきた。2004年に5兆円、2010年には25兆円ほどの投資規模になっている。ちなみに日本は再生可能エネルギーへの投資はほとんどない。

 こうした事実をみないフリをして、「原子力ルネッサンス」という言葉にだけ跳びついていた。これが世界と日本のギャップだ。

 また決定的に、政治家の知識がないことが問題だ。海外メディアの何が怖いかというと、「お前、こういう知識持っているから、そうした意見を言うんだろう」といった感じで突っ込まれることだ。そのときに「知りません」と答えると、「お前、知らなくてそんなこと言ってんの?」といった話になってしまう。

 日本の政治家というのは、細かい部分については触れず「原発がなくなれば、電気が足りなくなる」と大雑把な話で終わりがち。1つ1つの問題を詰めていくと、多くの政治家は「知らない」と答える。また「知らない」ことで、許されてきた部分もある。

 ところが海外メディアからは「なぜ、お前はそうした結論を言うのか?」と詰めてこられるので、細かい部分をバックアップしていかなければいけない。きちんと補っていかなければ、「それはお前の幻想ではないのか」と言われてしまうからだ。

 政治家に投げかける質問が、海外メディアと日本のメディアではレベルが全く違うのだ。

 米国には海軍に原子力潜水艦があるので、原子力ムラでない専門家がいる。しかし日本は原子力ムラの住民でなければ、まともに相手にされない。なので調査をするときには、どうしても原子力ムラの中だけになってしまう。東京大学で原子力を専門にしている先生に話を聞きに行くと、そこも“汚染”されている(苦笑)。この部分も、世界と日本の大きな違いなのかなと思っている。

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