著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。
岩波書店が2013年度定期採用で「事実上縁故採用に限る」と宣言していることについて、一騒ぎになっています。9割方の意見は「コネ採用など許せん」という批判的なものですが、一方で「『コネ』にも理あり」という意見もあります。しかしこの騒ぎの注目点は岩波書店ではなく、その伝わり方にあります。
ネットでの炎上はもはや何も珍しいことではなくなりました。「意図的にあおることを書いて注目させる」というマーケティングまで出始める始末。某有名タレントの書籍発売やら芸能人が文学賞受賞なんて手法でもくやしいことに売れているのですから、見事にてのひらの上に乗せられた客がいるわけです。
コネ採用が良いの悪いの言う前に、そもそも岩波書店はコネ採用なんて言ってないのではないでしょうか。同社採用ページには……。
A:4年制大学卒業者(2013年3月卒業見込者を含む)1982年4月2日以降生まれ。
B:出版関連業務(編集/製作/校正/販売/宣伝/経理/総務など)経験者=学歴は問わない 年齢:35歳程度まで ※岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること
……としか書かれていません。
岩波書店の肩を持つつもりはビタ一文ありませんが、これって「コネ採用」なんですか? そもそも「コネ採用」ってどんな意味なのでしょうか。コネがありさえすれば「誰でも採用」という意味にはおよそ取れませんし、総理大臣や経団連会長のせがれならどうか知りませんが(多分ないと思いますが)、コネがありさえすればどれだけ無能で学歴や能力や体力も就業がおぼつかないような人間でも採用するなんてあり得ません。
しかも、岩波書店は「コネを持ってくればどんなバカでも全員採用」と書いているのではなく、「紹介があること」としか書いていません。まったく面識のない岩波書店の著者や社員から「紹介を受ければ」誰でも応募できます。そこから選考になるのです。これってコネ採用ですか?
私はいずれにもコネはないですが、応募するなら……。
1.「コネはないですがぜひ検討して下さい」と迷惑承知で熱意をつづって応募する
2.社員を探し出し、土下座して熱意をつづった手紙を渡して紹介してもらう
3.お金に困っていそうな著者を探して、3万円で紹介してもらう
そんな手を考えました。「あ、でも私は出版業務経験がなくて、年も35歳を相当超えている! 差別だ! 岩波書店! 私は被害者だ!」なんて言ってもみたり。
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