福島第1原発の事故が起きて、まもなく1年が経とうとしている。いま振り返ってみて、事故直後の報道についてどのように感じている人が多いのだろうか。「政府の発表を垂れ流しにしているだけではないか」「東電への追及が足りないのではないか」といった不満を感じているかもしれない。
事故前から「核燃料サイクルには問題がある」と訴え続けてきた、衆議院議員の河野太郎氏はメディアの原発報道についてどのように見ているのか。海外メディアと日本メディアの“違い”や東京電力で行われた記者会見などについて語った。
――原発の事故報道で、メディアはきちんとその役割を果たしたのでしょうか。政治の世界にいる河野さんは、どのように見られていましたか?
河野:私は以前から「核燃料サイクルに問題があるのではないか」と言い続けてきた。しかしメディアに取り上げてもらうことは、ほとんどなかった。
福島第1原発で事故が起きてから、メディアは一転して、東京電力や電力業界に対し、ものおじしないで報道できるようになったのではないだろうか。
テレビで見ていた津波の現場あるいは福島第1原発の現場と、実際に現地に足を運んで目にしたもの、それには大きな違いがあった。例えば津波の現場では、遺体を目にした。しかしテレビでは、そうしたことを報道しなかった。もちろん「あの凄惨(せいさん)な状況をお茶の間に流すわけにはいかない」という判断があったのだろう。また新聞の写真も同じような判断があったのだろう。
被災地の現場を報道する際、メディアは一歩引いた形でスタートしたかもしれない。一方、福島第1原発の事故現場は、かなり大変だったと思う。現場の作業員は想像を絶する状況で、作業を続けていた。作業員たちのそうした姿をメディアはどこまで伝えたのだろうか。
また現場で取材をした記者も、相当な覚悟をもって行ったのだろう。しかし、そのへんの大変さが伝わってこなかった。
原発で事故が起き、各社の報道が始まったわけだが、いわゆる“大本営発表”をそのまま流していたケースが目立った。海外のメディアと日本のメディアの大きな違いは、質問の突っ込みがかなり違うこと。私はこれまで「原発はおかしい」と言い続けてきたが、その私でも“たじたじになる”くらい、海外メディアの突っ込みはすごかったのだ。
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