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» 2012年02月06日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:実力だけじゃダメ、プレッシャー耐性も必要な時代に (1/3)

社会情勢の変化で、年功序列、終身雇用が崩れてきた日本企業。これからは、雇用への不安を抱えながらも高いパフォーマンスを出せる能力が大切になってくるとちきりんさんは語ります。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年8月10日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 ちきりんは「古き良き時代の日本企業」で働いた後、極端にアグレッシブな人事制度を持つ米国系の投資銀行でも働いたことがあります。

 転職前には「そのうち日本企業も年功序列や終身雇用を維持できなくなる。だったら早めに欧米的な組織環境に慣れておいた方がいいよね」と思っていました。

 しかし、実際に外資系企業で働いてみて分かったのは、「こんなに高いプレッシャーの下で楽しく働けるのは、ごく一部の人たちだけだ。大半の人はこんなところでは力が発揮できないだろうな……」ということでした。

 別にそれは、あからさまに目に見える厳しさではありません。そこら中で誰かが罵倒されているとか、毎週誰かが解雇されるとか、そういうことではないのです。

 職場には冗談も飛び交っているし、みんなよく笑います。同僚や上司とランチを食べ、帰りに飲みに行くこともあり、一見すれば日本企業と何も変わりません。中には何も教えてくれない先輩もいますが、新人にはトレーニングや指導の仕組みがある企業が大半です。

 では、何が個人にプレッシャーをかけるのでしょう?

 それはさらっとした、本当にさらっとした「成果による評価」です。

 想像しやすいように新卒学生で説明しましょう。23歳で就職し、同期が5人だとします。内定時から1年間何度も飲みに行って仲良くなり、ニューヨーク本社で行われる数カ月の新人研修ではともに助け合った仲間です。

 社会人になって2年経った25歳の時、そのうちの1人が昇格します。年収は同期より800万円(差額ですよ!)高くなります。「お前やっぱすげえな!」と同期で祝福します。

 半年後、同期からもう1人昇格します。「おめでとう!」とみんなで飲みに行き、残った3人は「俺らも頑張んないとやばいよな〜」と自嘲気味に笑い合います。

 その半年後、今度は彼らより1年後に入社した後輩が1人昇格します。

 そのころから、昇格していない3人のうちの1人が、妙な動きを始めます。実力のある上司の周りをちょこまかと動きまわり、個人的な用事まで手伝いながら成果の出やすい仕事を回してもらおうとする……かのように周りには見えます。

 このあたりから残りの2人に漂う空気が重くなります。どちらともなく言い出します。「おれ、転職も考えてるんだ。この仕事はやっぱり向いてなかったかなって思うこともあるし」「何だよ、もうちょっと一緒に頑張ろうぜ」。

 「解雇される前に自分で退職したい」と思うのは、26歳の若者の精一杯の自己保身術です。元気で能力が高く、多くの中から選ばれて入社してきた優秀な若者が、自分を守るための言動を始めるのです。たかだか20代半ばという年齢で。

 中途採用も同じですが、個人の受けるプレッシャーははるかに大きいです。新卒で入社した人は最初からそういう環境にいますが、中途採用の人は別の世界も知っています。「自分はそれを捨ててきた」という思いがある彼らにとって、「実はあっちの方が良かった」と感じてしまうことは、そのまま後悔という否定的な感情につながってしまうからです。

 また、彼らの多くは家族を抱えています。転職に反対する奥さんを説得して、転職してきた人もいます。そうなると、気軽に弱音を吐くこともできません。

 早朝から深夜まで仕事がハードなため、多くの人がオフィスに近い都心に住みます。外資系企業には社宅はないため、夫婦と子どもの3人家族なら家賃30万円は“ごく普通”の水準です。なので転職するにしても、間隔が数カ月空くだけで100万円単位の貯金の切り崩しが必要です。辞める判断もまた簡単ではありません。

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