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» 2012年02月03日 08時00分 UPDATE

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」:4分の1に縮小したジグソーパズル市場、老舗のサバイバル戦略は? (1/4)

市場規模がピーク時の約500億円から、2008年にはその4分の1の125億円にまで落ち込んだジグソーパズル業界。業界をリードしてきた老舗はどのように生き残りを図っているのか。やのまんの矢野成一社長に話を聞いた。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」とは?

 技術革新のスピードが上がり、経済のグローバル化も進む中、日夜、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き、どんなことに注目して、事業を運営しているのでしょうか。「リーダーは眠らない」では、さまざまな企業や団体のトップに登場していただき、業界の“今”を語ってもらいます。

 インタビュアーは戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。徹底した聞き取りを通して、リーダーの心の内に鋭く迫ります。


 業界の市場規模が往時の4分の1にまで縮小し、製品ライフサイクルが成熟期をとうに過ぎていることが誰の目にも明らかになった時、その業界でのみ生きてきた企業の経営者は、自社をどういう方向へと導いていけば良いのだろうか? 長期不況にあえぐ現代日本には、そんな難しい挑戦課題を付きつけられている企業は決して少なくないだろう。

 そこで今回は、市場規模がピーク時(1990年代半ば)の約500億円から、2008年度にはその4分の1の125億円にまで落ち込んだジグソーパズル業界にあって、独自の戦略で生き残りを図っている株式会社やのまんの矢野成一社長(58歳)にお話をうかがった。

ジグソーパズル市場規模推移

年度 2006 2007 2008 2009 2010
市場規模 13100 13122 12528 14414 15692
※単位:100万円、出典:日本玩具協会

 かつてジグソーパズルは欧米からの輸入に依存していたが、やのまんは1970年代に日本で初めて「富士山」「金閣寺」「姫路城」などを題材とする国産商品を開発・生産した、業界のパイオニアである。

 現在、日本のジグソーパズル業界は主要8社ほどで構成されているが、やのまんは過去40年近く、マーケットシェアで業界トップをほぼキープ。現在の従業員総数は約80人(男女半々)で平均年齢は39歳。矢野社長自身は、オセロを扱う会社に5年間勤務した後、やのまんに入社し、1997年に父親の後を継いだ2代目社長である。

 誰もが、人生で一度は手にしたことがあるだろうジグソーパズルだが、昨今はどのような商品がヒットしているのか。そして、業界内部では今何が起き、どこに向かおうとしているのだろうか?

ah_simada1.jpg やのまんの矢野成一社長

結局は絵柄次第!?

 「ジグソーパズルの売れ行きは、結局、絵柄次第という面があるんですよ」と矢野さんは苦笑する。

 ジグソーパズルは個々のピースの形状や絵に隠されたヒントを見抜き、全体の絵柄を組み立てていく知的娯楽だが、日本では完成品をインテリアとして室内に飾る習慣もあるため、全体の絵柄が購入に際しての決め手になることが多い。

 そのせいもあってか、近年はとりわけ、「人気キャラクターの版権を押さえることがジグソーパズル会社の生命線である」という考え方が幅を効かすようになり、実際、業界では人気キャラクターを使ったヒット商品が数多く生まれている。

 やのまんでも、ディズニー作品のほか『新世紀エヴァンゲリオン』などの人気キャラクターを使ったパズルが好評だということだが、矢野さんは業界のそうした風潮に対して警鐘を鳴らす。

 「今や、版権獲得競争の様相さえ見せていますが、そうなれば結局は資本力のある会社が勝ち残ることになるでしょう。しかし、そんなことをしていると、“ジグソーパズルならではの面白さ”というファクターは次第に後退していってしまいますし、それなら別にジグソーパズルでなくてもいいということになってしまいます」

ah_simada2.jpg 1970年代にパズルブームの火をつけた『モナリザ』(左)、『新世紀エヴァンゲリオン』では綾波レイと渚カヲルの絵柄が人気だという(右)、近年は『ONE PIECE』などの人気作品の版権を持つエンスカイが好調という

 そればかりではない。アニメの人気キャラであれ、テレビの人気アイドルであれ、ジグソーパズルとして商品化したからといって、そう簡単にヒットするわけではなく、むしろ失敗するケースも少なくないという。

 なぜなら、そうした商品を出したとしても、そのキャラクターやアイドルのファンがパズル好きとは限らないからだ。「『ジグソーパズルなんて面倒臭い』と言って、ポスターやカレンダーを買うということだってありますよ」と矢野さんは指摘する。

 言われてみれば当然の話だが、こうした題材の場合、「これだけ人気があるのだから大丈夫だろう」ということで、詰めの甘い商品企画になりやすく、ユーザーのニーズに合っているかが十分に検討されないケースがあるという。なるほど、この業界に限らず、それはありそうな話だ。

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