こうした事情の中で、スーパーひかりプロジェクトが始まった。これには、スピード面のライバル、TGVの成功も後押ししていた。TGVはパリ - リヨン間において、航空機のシェアを奪った。都市と空港の移動時間や搭乗手続き時間を加味すると、TGVのほうが実質的な到達時間が短かったからだ。
300系と東海道新幹線に明確な目標が与えられた。営業最高時速270キロ(実際の営業運転において定められている最高速度)。東京―新大阪間2時間半。これを実現すれば、スピード面で対抗できる。あるいは、実質的な到達時間では勝てるかもしれない。
鉄道車両において、スピードアップは難しくはない。より強力なモーターをたくさん載せればいい。問題はスピードアップより、安全に止めるほうだ。もっとも、これも新幹線以降の技術向上でメドは立っていただろう。
300系の大きな課題は、モーターやブレーキよりも、車体の軽量化だったという。スピードを上げれば振動は大きくなり、振動が大きくなれば騒音も大きくなる。乗り心地は悪くなり、沿線に与える影響も大きい。都市間で広野を走るTGVでは気にしなくても良いことかもしれないが、新幹線はそうはいかない。1975年の名古屋新幹線訴訟※を契機として、1975年に新幹線の騒音について環境基準が定められている。
要するに、どれだけスピードを上げても、0系と同等の振動範囲としなくてはいけない。そのために、300系はできる限り軽量化された。16両編成で0系は970トン、300系は710トン。モーターの高性能化で数が減った上に、車体も鋼鉄製からアルミ製に変わった。100系のような2階建て車両がなくなり、運行開始当時に「中低速域で細かな振動がある」と評された。これは軽量化が至上命令だったからだ。もっとも、乗り心地については後に改善策が講じられたという。
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