大学秋入学は新卒一括採用を変える……か?(1/2 ページ)

» 2012年02月01日 08時00分 公開
[増沢隆太,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 東大が音頭をとって旧帝大+東工大などが賛同を示しているという「大学秋入学」ですが、新しい制度に付きものの賛否の声が両方あります。大学側や学生側からは就活における効果、「新卒一括採用を崩す効果を期待する」との声もあるようです。しかし、私は「秋入学が広まっても一括採用システムは変わらない」と予想します。

東京大学公式Webサイト

 私は秋入学化に反対ではありません。しかしこれが就活激化を沈静化させたり、新卒一括採用をやめさせる、とも思いません。理由は2つです。

 1つ目は、秋入学移行は外国人が海外から日本の大学へ入学することを促進するのには有効だと思いますが、それは就職とはリンクしません。東大を筆頭とするエリート校が一斉に変わるのであれば、それらを採用したい企業は当然タイミングを合わせてくるでしょう。結果として一括採用自体は変わらないか、もしかすると秋入学のエリート学生選考と、それ以外の大学生選考と“二括”選考になるかもしれません。

 企業の新卒一括選考は企業にとってコスト配分や効率の点でメリットが大きいから存続しているわけで、それをくつがえすほどのインパクトのある施策がなければそうそう変わることはないと言えます。秋入学に対する企業アンケートなどでも、こうした一括から二括くらいへの変更を考えているところが多いようです。

 就活の激化と一括採用は、直接は関係ありません。もし一括採用がなくなれば、今度は通年での採用となりますから、就職が決まらない学生は勉強そっちのけで、決まるまで終わりなき就活をしなければならなくなります。

 一括採用のせいで大学生が苦労しているのではなく、採用数がたいして増えていないのに、大学生数が増えすぎたことが原因なのですから、この根本的要因が変わらない限り、「すべての大学生が楽に就職できる」環境は来ないでしょう。景気循環を待っても、欧州危機などを抱える現状ではそうそう好景気が巡ってくる兆しは見えません。

 何より「制度を変える」ことは、1人をハッピーにすることではなく、全体のルールが変わるわけですから、自分1人だけ余裕をもって就活できるわけではなく、自分1人をじっくりと企業が審査してくれるわけでもありません。

 現在の超氷河期でも、1人で有名企業の内定を独占してしまうような超売れっ子学生と、何百社応募してもまったく採用に至れない「二極化」が起こっている現状があります。また、新卒有効求人倍率も1倍を超えているわけですから、理論上、今の就活の厳しさは制度でどうなるものではないと考えます。

求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(出典:リクルートワークス研究所)
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