日本に足りないモノは? 給与一律カットの弊害ちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か(最終回)(2/5 ページ)

» 2012年01月31日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

今は嵐が来ている状態

中田宏さん

ちきりん:なるほど。やっぱり政治家が、中田さんにとって重要な職業なんですね。

中田:リーダーがきちんとリーダーシップを発揮していないから、世界の中で日本は後塵を拝していると思っています。決断をするためには、十分な知識と本質を見抜く能力と思いきりのいい性格が必要。簡単に言えば、楽天的な勉強家、あるいは、本質をわきまえた馬鹿者とでも言えるでしょうか。

ちきりん:高度経済成長の時代であれば、すべての人の年収が放っておいても上がっていく。そういう時代であれば、リーダーも社会の仕組みについて決断することはあまり難しくない。しかし今は嵐が来ている状態なので、船頭になるのは覚悟が必要ですよね。

中田:高度成長期ならば、世論を二分するような決断自体が少ないでしょうね。

ちきりん:そうですね。経済が高成長していれば、福祉を手厚くする一方で税金をさげることさえ可能ですから、難しい判断は少なそう。ビジネスでも、何を作っても売れる時代であれば「とりあえず冷蔵庫を作ろう」など、適当な決断をしてればいい。

 でも「コレを作っても売れないかもしれない」「失敗すると会社が潰れるかも」という時代に決断するのは誰だって怖いですよね。だから今の時代、そういう覚悟をもって大きな判断をする人がものすごく少ない。自分がトップの間だけ、平穏無事にすごそうとして、怖いことは先送りする人ばかり。

 私は思うんです。今のような環境の中で決断し行動する人を増やすのは簡単ではないのだから、すでにそういう覚悟がある人に対して、国民はもっと彼らを尊敬し、大事にしなければいけないって。みんなのために最前線で戦おうという人は、いわば“社会の財産”なのですから。それなのに日本では、そういう人を叩いてつぶしてしまったりする。「リーダーポテンシャルをもっている人」という貴重な財産を守れない今の状況は、本当に残念だなあと思います。

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