世界一周中に起業、26歳の若者がスペイン語オンライン学習事業を始めたワケ世界一周サムライバックパッカープロジェクト(3/6 ページ)

» 2012年01月31日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

海外旅行中にどのように仕事を進めているのか

――2人のdotzでの役割と仕事内容を教えてください。

有村 dotzというよりも、スパニッシモでの2人の役割をお伝えします。すごく正直に話すと、基本的にはすべてを2人で見ながら仕事を進めています。その中でも役割を付ける必要がある時は、「優先順位を付けてから、どちらがよりスピーディーに仕事ができるか」という話し合いをして決めています。

 もう少し具体的に話すと、スパニッシモの構想を実行に移す時に、3カ月で立ち上げることに決めたので、スピードが命ということだけは分かっていました。しかし、「立ち上げをするって、そもそも何せんとアカンのやっけ?」というところからだったので、やらないといけない項目を書き出してみて、とにかく目の前の優先順位の高いものから片付けていました。

 向こう3カ月のスケジュールを見ると、10月末には僕がサンフランシスコに行くことが決定していたので、このタイミングで必要なインフラを全部整えてしまおうと総務関連の仕事は僕が引き受け、また前職の経験から、日本での営業組織の編成とその戦略についても僕が引き受けました。

 その間、グアテマラ側に残る吉川は、現地での営業として現地学校との提携と、自分たちの武器になる独自のカリキュラム作りの部分を引き受け、役割分担しました。

 そのほかのWebサイト、マーケティング、財務、法務、などは基本的には2人でみながら、その時々でスピードをもってできる方が先頭を切って取りまとめるよう分担しています。

 この方法自体は現在まではとてもうまくいっています。「よりスピードをもってできる方」というのは2人で話をすれば大方すんなり決まるので問題ないですし、あとはそれを相互でチェックし合いながら進めています。

 米国とグアテマラで離れていた時は、毎日Skypeなどで連絡を取り合っており、まるで遠距離恋愛を始めたばかりのカップルのようでした。

 上記で話したように、可能なことはすべて2人でやりましたが、初めての仕事も多かったです。例えば総務の仕事。これはなめていました……。「PCとか発電機とか、必要なものを買ってくれば大丈夫っしょ!」くらいのノリだったんです。

 ところが、例えばこの仕事は簡単に言うと「必要な機材を可能な限り安く調達し、期日までに安全に目的地までに購入したものを到着させること」ですよね。

 こんな簡単そうなことがものすごく難しかったです。購入したい商品の評価が割れていると、どちらを信用していいか分からない、商品のスペックが正確に記載されていない、到着予定時刻に来ない、購入した商品が危険物扱いで飛行機に積めない、とか挙げればキリがないですが、細かいことが苦手な私としては苦行でした。

 今となっては、この細かさが物事を進めていく上でいい影響を与えてくれるようになりましたが、当時この仕事はキツかったです。

 けれどこの仕事を進めていく中で、カスタマーサービスの重要性と、日本のカスタマーサービスの質の高さには改めて感動しました。日本人からすると「当たり前」と思っているかもしれませんが、やっぱりものすごく鋭いし、きっちりしています。この感覚は重要だと思います。この「当たり前」の感覚を、早くサービスの標準にしたいと思っています。

――スペイン語会話オンラインサービスに着目したキッカケを教えて下さい。

有村 僕たちは純粋に、自分たちが継続して使い続けたいサービスを作ること、このサービスを通してグアテマラのスペイン語学校の講師に対して雇用を創出すること、そして外国人と直接的に仕事ができるプラットフォームを作りたいと考えてスタートしました。

 僕たちはグアテマラで2カ月間スペイン語のマンツーマンレッスンを受けていましたが、本当にステキな語学学習の機会で、こういったものを体験できない人に、ぜひ機会を作りたいと最初は何となく考えていました。

 自分たちが受けたようなサービスがすでにオンラインに存在するかどうか調べて体験入学を行いましたが、継続して受けたいと思うものはありませんでした。

 そうして、調べていくうちにeラーニングの需要が世界で拡大していること、スペイン語が世界で2番目に多く話されている言語であること、米国でいえばヒスパニック人口の継続的な伸びなどの事実から、チャンスはあるのではないかと思っていました。

吉川 もう1つのキッカケは、グアテマラの雇用状況にありました。こちらのスペイン語の先生はみんな契約社員と一緒で、生徒がいれば仕事はあるし、いなければ一切ないというのが現状。特にスペイン語の生徒は外国人(観光客)がメインのため、観光のローシーズンは失業する人がたくさんいます。

 仕事がないどころか、自分の契約しているスペイン語学校が一時的に閉鎖することもよく聞く話で、不安定な職場環境にいながら、失業率の高いグアテマラでほかの職業にありつけない方がたくさんいます。しかも、失業手当など論外。助けてくれる人はおろか、家族すら養えない先生がたくさんいます。また、先生が増え過ぎて、講師の時給の値崩れが起き、より大変な職場環境が今の先生にはあります。

スペイン語の先生たちと

 こういった現状を見ていると、「どげんとせなー!」みたいな感情が自然と出てきて、自分自身今この現状を少しでも改善できるよう日々取り組んでいます。

 自分たちが継続して学びたい場所、そして先生たちが学校での授業以外の仕事のチャンスをフェアにつかめるようにすること。そのためには、こちらとしてもサービスをグアテマラの多くの先生に知ってもらう必要があるし、チャンスの拡大をしなければならない。

 ただ、現状の予算や規模感では、まだまだ遠い話ですが、必ずカタチにしたいと思います。だから、最初に日本マーケットでサービスの提供を開始し、同時により大きな市場である米国に挑みたい。

 僕たちが雇用する先生も増やすことだってできるし、このサービスがうまく機能すれば競合も増え、先生の雇用状況が大きな意味で増えると考えています。だからこそ、そこに名乗りをあげ、先陣を切って成功に導きたい。単純にそれだけです。

Copyright© SAMURAI BACKPACKER PROJECT Inc. All Rights Reserved.