あっぷあっぷのコンテンツ産業に、打つ手はあるの?中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(3/3 ページ)

» 2012年01月30日 12時51分 公開
[中村伊知哉,@IT]
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 そこで。複合クールジャパン策を求めたい。コンテンツと、他業種との連携だ。エンターテインメントに家電、ファッション、食といった日本の強みを組み合わせ、総掛かりで海外進出を図ることである。

 コンテンツという文化力と、ものづくりという技術力を掛け合わせる。いずれも日本の強みだ。てゆーか、その両方を国内に持ち合わせている国は多くない。チャンスなのだ。しかし、アニメのオモチャ商品やコスプレ衣装など、コンテンツ絡みの多面展開はこれまで、商品ごとや企業ごとの連携は見られたものの、産業を横断する面的な取り組みは乏しかった。

 ヒントはある。韓国メーカーは政府の後押しもあり、K-POPや韓流ドラマの映像を組み込んで販売することでアジア市場での家電製品のシェアを伸ばしている。韓国旅行を題材にした映画をヒットさせてアジアからの観光客を引き寄せたりもしている。

 米国では日本のスナック菓子が静かにヒットしているという。菓子のおいしさと、かわいいパッケージデザインやキャラクターが受けていて、日本食品店に行かなくてもネットで手に入るようになった。製造力と文化力の融合がデジタル技術で新しい市場を開く可能性が見える。

 オタクの聖地アキハバラはアジアからの買い物客でにぎわっている。80年代、家電の町からPCの町に変身した後、90年代にポップカルチャーの町へと転身した秋葉原では、アニメのキャラクター人形やカードゲームの売り場の隣に抵抗器やコンデンサが並んでいる。そのハードとソフトの融合した環境が文化とビジネスの増殖炉となっている。

 こうしたジャンル融合による輸出戦略を大規模に推し進めることが必要だ。政府には異業種を連携させるコーディネイト役を期待したいが、そのためにはタテ割り省庁の壁を超えて取り組む覚悟が求められる。

 身の回りに眠る日本の魅力を掘り起こし、ハードとソフトを組み合わせた総合力を発揮できれば、新しい成長エンジンの芽も見えてくるだろう。

 最近、外務省は「ビヨンド・クールジャパン」、クールジャパンを超えていこうと唱え始めた。マンガ、アニメ、ファッションの個別領域を乗り越えた総合戦略が要るというわけだ。よし、そうすっか。

 では、年始めに、皆さんご唱和ください。

 ビヨンド・クールジャパン!

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