その一方、いわゆる新興国は勢いがある。その原動力となっているのは、国有企業だ。ひところ中国経済を語る時に、国有企業というのは中国の弱点と見なされていた。合理化が遅れ、競争力もないお荷物企業とされていたのである。だから中国経済が発展すれば、やがて国はそれらの企業を民営化すると考えられていた。
しかし、必ずしもそうではなさそうだ。エコノミスト誌によれば、中国で国がバックについている企業の時価総額の合計は、株式市場の80%を占める(ロシアでは62%)のだという。また2003年から2010年にかけて、新興国の海外直接投資の3分の1は国有あるいは実質国有企業だともいう。
実際、中国などは国有企業のビジネスモデルは持続可能とし、これまでの西欧資本主義を手直しして、ベターなモデルにするという姿勢を示している。そしてそれに同意する新興国が増えているのも事実だ。
もっとも今はうまく行っているように見える中国やその他の国も、これから安定的にうまく行くかどうかは分からない。
逆のケースで言えば、インド経済の潜在成長力が急激に伸びた背景には、ガチガチの管理型資本主義だったインドで規制緩和が大幅に進んだことがある。2010年は、外資の資本進出を最後まで規制していた流通でも規制緩和が行われた。株式投資でも同様の規制緩和が進んでいる。
「見える手(国家)」による資源配分がうまく行かないことは社会主義経済の失敗が明らかにした。その一方で「見えざる手(市場)」による効率的な資源配分が、多くの社会問題を引き起こすことも明らかになった。そのことは民主主義が多くの社会問題に対して時に無力なこととも関連があるかもしれない。こうしたことをどう考えるか。「中間層を厚くする」という野田首相の問題意識は正しいとは思うが、日本がその方向に向かっているかどうかは大いに疑問でもある。
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