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» 2012年01月30日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:「会社のために……」という時代は終わり (1/2)

かつての日本企業は、「会社のために行った不正行為が発覚した社員」を守る傾向にありました。しかし、「もう、そんな時代ではなくなっているのでは?」と、ちきりんさんは問いかけます。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2005年9月3日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 最近、大王製紙やオリンパスの問題が騒がれましたが、それらは自分の遊興費のために会社のお金を流用したり、経営責任を隠すために粉飾決算を行ったりなど、経営者が「自分の利益のために不正行為をした」ケースです。

 しかし、企業内の犯罪でより多いのは、社員が会社のために違法行為に手を染めるという犯罪です。例えば、談合に業界カルテルにダンピング、監督官庁の官僚接待や総会屋への利益提供……これらは「私利私欲のための不正」ではなく、「会社の利益のために社員が違法行為を行う」というものです。

 過去にも大手商社や自動車メーカー、メガバンクなど、さまざまな一流企業がこのタイプの不祥事を起こし、社員が逮捕、起訴、時には有罪判決を受けています。日本を代表するような大企業でも、そういった行為がまん延していたのです。

 この種の犯罪の場合、昔は“運悪く”悪事が公になって社員が逮捕されても、会社は一生その社員の面倒をみるのが慣習でした。形だけ解雇しても、すぐに子会社で再雇用したり、その社員の家族を雇ったりなどして、最低限の生活に困らないよう配慮していたのです。

 しかし、最近は内部告発も増えていますし、国際的な視線もあって、身内の中だけでの甘い処分でお茶をにごすのは次第に難しくなってきました。「会社のためにやった」が通らなくなり、個人の犯罪として個人で責任をとらされるケースも増えています。特に大変なのは、米国での不当取引で有罪になる場合です。

 大企業に就職し、海外駐在するのはエリートコースです。ところが米国駐在中にカルテルで訴えられると、日本とはケタ違いの賠償金を負わされ、時には服役も必要になります。会社が賠償金を肩代わりするようなことは株主が許しません。

 エリートとして順風満帆の人生を歩んでいた人が、「組織内で業務として毎年引き継がれてきていた不正な事務処理」を淡々と行っていたら、ある日突然、個人としての責任を問われるのです。

「自分だけが悪いのか?」でも……

 すでに7年も前になりますが、2005年にカネボウの粉飾決算に関して、旧経営陣と大手監査法人の公認会計士が逮捕されました。

 日経ビジネス(2004年11月8日号)の「敗軍の将、兵を語る」という人気コラムで、カネボウ最後の社長の帆足隆氏が、「自分だけが悪いのか? カネボウはずっと粉飾決算をやってきた。前任者に何のおとがめもないのはおかしい」「私が社長を引き受ける時には、それを含めて引き継いだ。自分が粉飾決算をしなければ、会社はすぐに倒産していた。社員の生活のために何とか乗り切ろうとしたのだ」という趣旨のことを発言していました。

 「あんな大変な時に火中の栗を拾う思いで社長を引き受けたのに、何で俺だけ逮捕されるんだ?」という気持ちは分からなくもありません。ある意味ではこれも「会社のため」だったのでしょう。でも“アウト”です。

 公認会計士も、お得意様である大企業の決算で、犯罪とも言える巨額の粉飾決算が行われていたことに気が付き、倒産や経営者逮捕につながると理解した上で、「これに適正意見は付けられません」と言うのは、勇気のいることでしょう。それは分かります。分かりますが……でも逮捕される時は個人なのです(カネボウのケースでは、会計士は粉飾決算の手法をアドバイスしたとされており「見逃した」だけではないので、その罪はより大きなモノです)。

ah_tiki.jpg カネボウの粉飾決算にあたっては、中央青山監査法人(現在は存在しない)の会計士が逮捕された(出典:インターネットアーカイブ)
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