Apple Store生みの親は老舗デパートを再建できるか?(2/2 ページ)

» 2012年01月27日 08時00分 公開
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お客さまの視点からビジネスを見る

 その彼らしく、ジョンソン氏がJ.C.ペニーの最高経営責任者に就任して真っ先にやったことは、一顧客としてJ.C.ペニーのメール配信リストに登録することだったとか。あくまで、「お客さまの視点からビジネスを見る」ということをモットーとしているんですね、このジョンソンという人は。

 そして気付いたのは、毎日のように、そしてひどい時には1日のうちに数回もやってくるメールの嵐。それもすべてが安売り情報ばかりです。みなさんも身に覚えがあると思いますが、今どきは誰でも「ジャンク・メール(「がらくたメール」という意味で、迷惑メールのこと)」に飽き飽きしています。宣伝のメールには目を通さない人も多いですし、あまり頻繁にメールされると、それだけで悪印象を持ってしまうことも少なくありません。

 再建への試みの1つとして、ジョンソンはこのJ.C.ペニーの「安売り体質」にメスを入れることを発表しました。現状、J.C.ペニーでは何と全商品の3分の2が常に50%かそれ以上のディスカウントで売られているというのですが、一時的な目玉として提供される「バーゲン・セール」をやめ、その代わり商品の店頭価格を軒並み40%程度引き下げることを決定しました。

 米国では年々「デパート」という業態が振るわなくなり、業績の停滞を見せています。それでも、ニーマン・マーカスなど高級感を売りにしたところはまだ良いのですが、一番苦しいのは、J.C.ペニーなどかつて「庶民のデパート」として親しまれてきたお店でしょう。これらの店はデパートならではの高級感やイベント性に欠ける反面、価格や品揃えではウォルマートやターゲットなどの量販店に及ばない、という実に中途半端な存在になってしまっています。

 「優れた立地、莫大なマーケティング予算、広々とした売り場など、デパートは競争に有利な条件をすべて備えている。零落してしまったのは、何かが根本的に間違っているから」というのはジョンソン氏の談。先に述べた価格戦略のほかにも、デパートの中を魅力的なブランドのミニ・ショップをテナントとして取り揃えた市場のようにする、また、顧客が集い、くつろいだり、催しものを楽しんだりできる「タウンスクエア(街の広場)」をフロアの中央に設けるなどといった作戦を打ち出しています。

 個人的には、シアーズやJ.C.ペニーなど規模の巨大な老舗リテーラーにとっては、「すでに遅し」という気がしないでもないのですが、この「小売業の導師」がどのような魔術を見せてくれるのか非常に楽しみです。普段はJ.C.ペニーとは縁遠い私ですが、近々ひとつ覗きにいってこようかと思っています。(石塚しのぶ)

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