スタートから2年半、裁判員制度の意義とはちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2012年01月23日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
前のページへ 1|2       

3.市民が国の運営に参加することに意義がある

 上記は「プロ側が一般市民に対する理解を深める」というメリットですが、反対に「一般市民が公権力や国の仕組みへの理解を深める」というメリットもあります。

 裁判官や検察官が狭い世界で生きているように、一般の人だってごくごく狭い世界で生きています。裁判に参加することにより、私たちもまた広い世界を知ることになるし、その多様な人たちのいる社会がどう運営されるべきか、考えを深めることができるでしょう。

 死刑制度の存廃、脳死からの移植制度や少年法のあり方、責任能力の問題など司法に関することだけではなく、社会福祉のあり方やコミュニティの問題など、裁判を1つでも体験し、衝撃的な社会の現実を目にすると、人の考えは大きく変わります。

 「自分とはまったく異なる意見の人がいる」「自分には理解できない世界の人たちがいる」と知ることの意義は、誰にとってもとてつもなく大きいはずです。

裁判員へのアンケート(出典:裁判員制度公式Webサイト)

 また、「公権力がどういった力を持っているのか」について知ることも大事です。ちきりんは、司法だけでなく立法(国会)や行政(官僚組織)についても、国民がそれぞれ1週間ずつでも経験できる制度があればいいのにと思います。

 参加する私たち市民には、社会制度への問題意識、社会を作っていくことへの連帯感や責任感が醸成されるでしょうし、同時に、常に一般人に見られることになる公権力側にも確実にいい影響があると思います。素人判断は危険という人もいますが、玄人の裁判官がやってきて、あれだけの冤罪があるのです。

 裁判員を経験した人は、「人を裁くことが怖い」「本当にあれで正しかったのか今でも悩む」と取材に答えていました。まさにそういう感覚を持っている人こそが、人を裁くプロセスに参加すべきなのです。

 万が一にもちきりんが被告席に立つことがあるなら、「人を裁くことの重さを、痛いほどに意識している一般の人」にぜひ裁判に参加してほしいと思います。

新しいモノを創るプロセスとは

 もちろん、新しい制度ですから細部には改善が必要な点も多いでしょう。でも、ちきりんは「細部まですべて完璧でないかぎり、一切始めない方がいい」とはまったく思っていません。新しいモノを創るプロセスとは、未完成なモノを継続的に改善していくプロセスなのです。

 新しいことは、ある程度考えたら、後は実際にやりつつバグ出しをして直していけばいい。患者の命がかかっている外科手術でさえ、長い期間そういうプロセスを経て、現代の医学技術として確立されてきたのです。

 裁判員制度が、今後も少しずつ改善され、日本社会に定着していくことを心から期待しています。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。

 現在、前横浜市長の中田宏さんとの対談「ちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か」が連載中です。

 →Chikirinの日記


関連キーワード

ちきりん


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.