怪文書をバラ撒いているのは、誰か――暴力団と役所の関係中田宏「政治家の殺し方」(6)(1/2 ページ)

» 2012年01月19日 13時00分 公開
[中田宏,Business Media 誠]

政治家の殺し方:

この連載は書籍『政治家の殺し方』(幻冬舎)から抜粋、再編集したものです。

前横浜市長の中田宏氏は「女性スキャンダルまみれ」で「ハレンチ市長」と命名された。悩み苦しんで白髪頭となり、死を考えたこともあった。今だからこそ語れる、地方政治のダークな実態とは。

中田宏氏のプロフィール

昭和39(1964)年9月20日生まれ。会社員の父親の転勤に伴い小学生から高校生の間は横浜、福岡、大阪、茅ケ崎、横浜と移り住む。身長184センチ、体重75キロ。趣味は読書とフィットネスジムでのトレーニング。座右の書は「路傍の石」(山本有三)、座右の銘は「先憂後楽」。血液型、性格共にA型。


すべては怪文書から始まった

 『週刊現代』の連載は、全国民の目に触れてしまったという点で大きなダメージを受けたが(関連記事)、それ以前から私を陥れようとする予兆はあった。それは2期目の市長選に挑む3カ月ほど前のこと、2005年11月から12月にかけてだった。

 「市政研究会」と名乗る団体から市会議員、市内選出県会議員、市役所局長ら宛に怪文書が都合十数回にわたって送付された。その内容は、『週刊現代』にも取り上げられた元ホステスとの関係を取り沙汰するもので、「弁天通3丁目のナナチャンと同伴された事件が、今市内で広く噂になってきました……」などと書かれていた。

 いかにも実際に噂があったかのような文面だが、この怪文書自体が最初の発信源だ。しかも、住所は中区港町1―1である。これは市役所の住所そのもので、市政研究会など市役所内には存在しない。だれが郵送したのか、さっぱりわからないという、実に怪しい文書なのである。

 「いったいだれが噂を流しているんだろう?」

 そう思っていたら、翌年1月4日の新年賀詞交換会で、アングラ新聞の主筆をしているK氏から次のような申し出があった。ちなみに、世の中の人は全くご存じないだろうが、一枚ペラか見開きほどの、いわば小学校の学校新聞のような体裁のアングラ紙が各地方の県庁や市役所などにはけっこう存在している。横浜市の場合は“第二記者クラブ”に属し、市役所内に事務スペースまで与えられて、議会の記者席に出入りも自由という慣行になっていた。K氏とは、そうしたアングラ紙の主筆を務める人物である。

 話の内容はこうだ。

 「噂になったホステスは、自分が懇意にしている、ある関係者の愛人で、怪文書は右翼関係者が送りつけたもの。そのバックには市議会議員がいる。右翼関係者としては証拠もあり、街宣車を市役所に回すと言っている。私が間に入るので、止めてほしければ、しかるべき人間が対応し、“あらゆる方法”について検討願いたい。ついては、右翼関係者と直接話す機会を設けてほしい」 

 こちらとしては、そんな事実などないのだから、とりあう話ではないし、ましてやお金を払って収めてもらう話ではない。結局、対応した秘書が「K氏の方でうまくまとめてほしい」という形で回答した。街宣車が回ってきて、「こんな噂があるー!」と虚偽の宣伝をされるのは迷惑だが、仮にやられたとしても「事実がないのだからそれまでだ」と、当時は思っていた。まさか後に本当に女性が表に出てきて、平然と嘘を並べ立てるとは思いもしなかった。

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