川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
思いがけず病気や体調不良になってしまったから、病院に行って治してもらおう。そんな感覚で、研修を実施しようとする経営者は少なくありません。
「この階層が機能していないから」「この分野のスキルが弱点だから」「士気が上がらない」「雰囲気が緩んでいる」といった組織のうまくいっていない部分をすぐに直してほしい。注射を打ったり、薬を飲んだりすればすぐに体調不良が解消するように、「ダメなところをすぐに直してほしい」と考えて研修を実施します。
もちろん研修に、注射や薬のような治癒を期待するのは間違ってはいませんが、同じ注射や薬を使っても効く人と効かない人がいるのと同様、同じ研修を実施しても、効果のある会社とそうでもない会社があることは理解しておかねばなりません。
「お金を使って研修を行うのだから、それなりの効果を求めるのは当然だ」という論理も分からぬではありませんが、注射や薬を使っても、相当に病状が悪化している人やそもそも健康状態が悪い人には効きにくいように、研修も、その組織や人材がどのような状態かによって効果のほどが異なってきます。
体調が悪くなったり、予期せぬ病気になったりしないためには、もしくは二度とそうならないためには、自分の体の状態を定期的にかつ客観的に知るために健康診断を行い、良くない部分があればその改善・強化を行うために、食事を変えたり運動をしたり何か節制をしたりと、地道な取り組みを行います。そうやって作ってきた健康な体には、何か病気があったとしても注射や薬がよく効きます。しかし、健康状態の把握もせず不摂生を続けてきた体には、注射や薬がよく効かない、あるいはそれだけの治療では済まないということになります。
研修も同じ。組織の機能不全や社会・顧客との不適合、その他の不都合が起こらないように(繰り返さないように)、まずは組織や人材の状況をしっかりと(何となくではなく、思い込みでもなく)把握しなければなりません。そして改善点を見出し、組織や人を鍛え、改善・強化していくという地道な活動に取り組む必要があります。そうやって大切に作ってきた組織や人材に対しては、研修は効果的です。
このことを分かっている会社と無関心でいた会社、曲がりなりにも取り組んできた会社と放置してきた会社では、研修の効果はまったく違うものになります。
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