「従軍慰安婦」抗議からみえる、日本で起きるデモの未来(前編)ニッポンの紛争地帯をゆく(3/4 ページ)

» 2012年01月18日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「在特会」の挑発を無視する「左翼」

 12月14日午前11時。「人間の鎖」に参加する市民たちの集合場所となっている日比谷公園霞ヶ関口に行ってみると、さっそく直接対決が始まっていた。

 一列に並んだ警官隊に隔てられ、2つの集団がわずか十メートルほどの距離でにらみあっているのだ。

 左側はもちろん「人間の鎖」のみなさん。そして右側は「在日特権を許さない市民の会」、略して「在特会」。前回、フジテレビデモに参加していた十代と二十代の若い女性が「イケている」と評していた保守系市民団体だ。

 「20万人の婦女子が日本の官憲に連れていかれたといいますけど、じゃあその時、朝鮮人は何をしていたんですか? みなさんはその問いに答えられないでしょう? 朝鮮人は家族思いなんですよ。目の前で自分の家族が日本兵に連行されてるのをただ指をくわえて見ているわけがないんですよ!」 

 日章旗が立ち並ぶなかで、「在特会」の男性が拡声器で「人間の鎖」に厳しい口調で語りかける。彼のいわんとしていることはよく分かる。

 私事で恐縮だが、かつて「朝鮮人女性を強制連行した」と証言し、「従軍慰安婦」問題のきっかけとなった吉田という元日本兵の取材をしに下関まで行った。そこで分かったのは、彼が共産党から出馬し、旧ソ連の友好団体に属するなどバリバリの左であり、地元でもかなりうさん臭い人物として知られていたということ。

 事実、吉田某は後に「あれは創作でした」と認めている。このように「従軍慰安婦」にはぶっちゃけ、怪しいネタ元が多いのである。

 とはいえ、そこは「左翼」のみなさんである。ロマンスグレーのご年配やインテリっぽい人たちが多いし、きっとこんな話を一蹴するような理論武装をしていらっしゃるに違いない。

 期待に胸を膨らませて、「人間の鎖」側の反論を待つが、彼らの多くはまるで目の前に「在特会」など存在しないかのように談笑をしたり携帯をカチカチいじったりしている。なかには、仁王立ちをして「在特会」メンバーにメンチをきっている人もいるが、基本的にはシカトなのである。

 なんだ、これは?

激しい抗議活動を展開する「在特会」。写真左側の外には、「人間の鎖」の参加者たちが対峙している

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