野田改造内閣がやるべきこととは藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年01月16日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 野田首相は、1月13日に改造内閣を発足させた。岡田克也元民主党代表を副総理にすえ、消費税増税と社会保障の一体改革は「日本にとって正念場」と不退転の決意を語る。

野田首相(出典:首相官邸)

 前の総理のように、こうした決意が「自らの延命」と重なるように見えないところは評価できる。しかし、それでも釈然としないという感じは多くの国民が共有しているようだ。

 国会議員の定数削減とか公務員の人件費削減とか、「身を切るのが先」という気持ちもその1つ。もう1つは先の見通しだ。消費税を2015年までに10%にしたところで、本当に社会保障(年金、介護、医療)は持続可能になるのかということだ。

 消費税率を5%上げれば、税収増は約10兆円。来年度予算でのいわゆる基礎的財政収支は22兆円の赤字だから、他の費用がこのままでも2015年度での目標「赤字半減」には足りない。もちろん放っておけば、社会保障給付費用が人口動態の変化によって自動的にふくらむから、財政赤字の解消にはほど遠い。

 社会保障給付費用は2011年度で108兆円と推計されている。これが2025年には150兆円を超えるのだという。毎年約3兆円ずつ増えていく勘定だ。もちろん増える分すべてが国庫の負担ではない。国庫負担として増える分は1兆円強だろう。そうすると政府が基礎的財政収支を均衡させる(国債関連費用を除いて、国の歳出を税収や税外収入などでまかなえる)目標としている2020年までには社会保障給付に関わる国庫負担は今よりも10兆円ほど増えることになる。

 この分を埋めるだけでも消費税をさらに5%引き上げなければならない。その上にまだ10兆円近く残る赤字を埋めるために5%、これで合計20%である。つまり他の条件が同じならば、消費税を20%にしてようやく国債残高の増加を食い止められるということなのだ。

 野田首相が不退転で増税に挑むといっても、実は国民に将来の姿を決して明らかにしていないのである。消費税を20%にするということをいま明言することは政治的に無理だとしても、「日本の未来はそれほど明るくはないのだ」と言わなければならないと思う。消費税を10%に引き上げれば、社会保障が持続可能になるなどという幻想をふりまいてはならない。

 今、切り込むべきは社会保障の給付制限だと考える。それが国や地方の財政をこれから先どんどん圧迫することになるからである。もちろん公務員の人件費が高すぎるならそれも削らなければならないにしても、国家公務員の人件費は5兆円にしかすぎない。20%削っても1兆円しか浮かないのである。国の資産を売却すれば100兆円単位になるのかもしれないが、それは1回だけのボーナス。最後の拠りどころにするしかあるまい。

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