最終回 1500万人を満足させることは可能か――問われる「ネットベンチャーの雄」の舵取り短期集中連載・mixiはどこへ行く?(6/7 ページ)

» 2012年01月16日 11時45分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]

mixiページはFacebookページたり得るか?

 そしてもう1つのハードルとは、「本人性」の問題だ。いわゆる実名か、匿名かという議論はネット上で頻繁に繰り返されているが、mixiのオープン化にも大きな影響を及ぼしている。

 Facebookの実名へのこだわりはよく知られている。明らかに偽名と分かるケースだけでなく、少し変わった日本語の名前のユーザーに対しても警告メールを送り、公的身分証明書等による確認を求めている。それに応じないユーザーのアカウントを停止するということにも躊躇がないようにさえ見える。最近ではGoogle+も同様のポリシーをもって臨んでいることも明らかになった(参照リンク)

 これに対し、mixiは開設当初は実名での登録を推奨していたが、現在では携帯電話による認証を行っているだけで、特に表示名が実名であるかどうかにはこだわっていない。そのためニックネームで参加しているユーザーも多い。実社会でのしがらみに縛られずに交流を楽しめるという利点がある一方、mixiニュースのコメント欄に見られるように、他者の目を気にしない罵詈雑言も散見される。

 誤解も多いところだが、表示名がニックネームであること=匿名ではない。変更可能なニックネームと異なり、固定となっているmixi IDによって、誰が何を言っているのかはある程度時間を遡って特定可能で、こういった状態を「顕名(けんめい)」と呼ぶ。この状態は、プライベート空間、あるいはコミュニティのような半パブリックな空間では上手く機能していたと言える。むしろ、ネット上に本名を晒すことに強い警戒感がある日本では歓迎されていたのではないだろうか。

 ところが、外部サイトに表示される「チェック」(この記事にも設置してある)や、今回のmixiページの登場によって、状況は変わってくる。誰が何を書いたかが、よりパブリックな場に表出するようになり、その場を提供する者(企業やサイトオーナー)にとっては、やはり「荒れにくい」ことが重視されていく。

Facebookがソーシャルプラグインとして外部サイトの利用を可能にしているコメント機能。ブログなどに設置すると、Facebookアカウントとひも付いた形でコメント投稿が行われるようになる

 SNSで利用している実名のアカウントでは、いわゆる「炎上」につながる罵詈雑言の投稿は行いにくい。1人のユーザーが複数人になりすまして炎上案件に燃料(過激な投稿)を連続投下するといったことも難しくなる。「ページ」という限りなくパブリックな領域に、炎上リスクを懸念する企業のようなビジネスパートナーを招き入れるには、やはり実名の方が安心感を演出しやすいというのは明らかだ。

 実際、Userlocal社が運営するmixiページ ランキング&トレンド(参照リンク)を見ると、フォローの多いページはタレントやアプリに関するものが多く、Facebookページのような企業の利用はまだ数える程しかない。

企業がオーナーのmixiページでは最多の8万5000フォロワーを誇るローソンのmixiページ。Facebookページの情報を一部流しているが、Facebookページの購読者数は22万以上

 バナー広告のような表示型広告であれば、PVもユーザー数も多いmixiが有利だが、企業がユーザーとコミュニケーションを取りながらブランドや企業イメージの浸透を図る事例も増えてきている。その変化に対応したものがこのような消費者とのコミュニケーションの場と言えるだろう。この1年で、Facebookページを開設する企業が増えている中、「実名・顕名」制を取るmixiページがどの程度その利用を伸ばせるかは、mixiがページの運営者やその利用者にいかに安心感を与えられるかにかかっている。

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