失業者と人手不足が併存するわけちきりんの“社会派”で行こう!(1/3 ページ)

» 2012年01月16日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2009年1月6日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 不況でどんなに失業者があふれていても、その一方で人手不足業界も存在します。そのため、失業対策の話になるとすぐに、「○○分野は人手不足だから、そこで失業者を雇えばいい」という話になりがちです。

 しかし、実際にはロジックは逆です。人手不足の市場にはすべて“人手不足である理由”が存在します。それらの市場は“多くの人を雇用できない理由があるから”、もしくは“継続的な雇用維持が困難だから”、結果として人手不足なのです。

 なので、失業者を無理矢理に人手不足市場に就職させても、根本的な問題が残る限り、雇用は長くは維持できず、どちらの問題も解決しません。

完全失業率の推移(出典:総務省)

人手不足には原因がある

 ところで、なぜ多くの失業者がいる一方で人手不足の市場があるのでしょう? ここでは、人手不足業界としてよく挙げられる「外食サービス業」「医療&介護」「農業」の3分野について考えてみます。

 それぞれの人手不足の理由を考えてみると……。

1.外食サービス業

 熾烈(しれつ)な価格競争のため利幅が薄すぎて、十分な人件費が確保できない→アルバイト中心で運営するため、少数の正社員の労働時間が異常に長くなり、時に心身の健康を損ねるレベルになる→正社員が長続きせず常に人手不足。

2.医療&介護

 高齢化、核家族化で需要が急拡大しているにもかかわらず、供給側が資格職のため簡単には増えない。加えて、供給側の収入源は公的保険(か保険料)であり、財政が厳しいために収入が押さえられがち。そのため雇用人数が増やせず、結果としてみんなが超多忙に。

3.農業

 昔ながらの家族単位の小規模農家では将来性がないので、子どもが農業を継がない。一方、農水省と農水族議員は、将来性の期待できる新規参入者が市場に入ってこないように規制している。このため新規雇用が生まれない。

 ……というところでしょうか?

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