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» 2012年01月13日 08時00分 UPDATE

サイバー大学が考える、モバイル学習の未来 (1/3)

すべての授業がオンライン上で受けられ、学士号を取得できるサイバー大学。従来はWindows PCでの学習しかできなかったが、今後はモバイル端末でも単位認定可能な学習ができるような実証実験を行っているという。その狙いについて、IT総合学部の川原洋学部長に尋ねた。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 すべての授業がオンライン上で受けられ、学士号を取得できることをウリに2007年4月に開校したサイバー大学。開学当初はIT総合学部と世界遺産学部の2学部制だったが、2010年春から世界遺産学部の募集は停止し、IT総合学部の実質1学部制として、ビジネスとテクノロジー両方の知識を備えた人材の育成を進めている。

 現在、サイバー大学の学生たちはWindows PCを利用した学習を行っているが、将来的に検討しているのがモバイル端末を利用した学習だ。その前段階として、同大学では2010年秋からiPhoneを利用した実証実験を行っており、2011年秋からは学生にiPad2を貸与し、モバイル学習を推進している。

 eラーニングの先駆者が考える、次世代のモバイル学習の姿とはどのようなものなのか。サイバー大学IT総合学部の川原洋学部長に尋ねた。

ah_saiba1.jpg サイバー大学IT総合学部の川原洋学部長

クラウド化と多くの端末への対応がテーマ

――サイバー大学で検討しているモバイル学習の取り組みについて教えてください。

川原 これまでサイバー大学のLMS(ラーニングマネジメントシステム)では、学生はWebベースのeラーニングで授業を受け、掲示板でのディスカッションに参加し、レポートや演習をこなして単位認定をしてもらっていました。しかし、開学から4年が経ったこともあり、2012年度からは次世代のeラーニング環境に変えていくことにしました。

※LMS……Learning Management Systemの略。学習教材の配信や成績などを統合して管理するシステムのこと。
ah_saiba0.jpg 従来はWindows PCでしか学べなかった

 変えていくに当たって心がけたポイントは2つあります。

 1つ目はクラウド化です。今までWebベースで行ってきた学習環境をクラウド化することで、それぞれの学生の学習履歴を同期させるんです。つまり、自宅のPCで授業を見たり、掲示板に書き込みをしたりしたら、勤務先でもiPadをちょっと開いてその続きを見られたり、書き込めたりするといったことです。

 2つ目はできるだけ多くの端末で使えるようにすること。今まではWindows PCでしか使えず、ブラウザもInternet Explorer限定でした。これをMacやスマートフォン、iPadのようなタブレット型端末でも使えるようにし、Firefox、Chrome、Safariといったブラウザでも利用できるようにしました。

 システムの開発はほぼ終わっていて、今、実証実験を行っているところです。

――実証実験ではどのようなことを行っているのですか。

川原 実証実験は全部で3段階を考えていて、今2段階目です。

 まず2010年秋に、PCで行っている授業コンテンツをiPhoneやiPadで見られるアプリ『e-カレッジ』を無料公開して、教養科目24科目を誰でも受講できるようにしました。学生だけでなく、一般の人にも使ってもらって、どのような学習効果があるのかアンケート調査しました。モバイルで行うeラーニングとはどうあるべきか、というところから始めたのです。

ah_saiba2.jpg iPhoneアプリ『e-カレッジ』。サイバー大学の一部授業を受講できる

 その取りまとめが終わったのが2011年初頭なのですが、iPhoneを加えるだけでは厳しいということで、iPadも活用しようという話になりました。ただ、iPadはブラウザの情報を見ることについては優れているのですが、インタラクティブな操作をする上では必ずしもふさわしくなかったんですね。

 サイバー大学の場合、ネット上での授業が100%なので、単位認定をするために本人確認をしないといけません。そこで、開学当初から本人確認の仕組みとしてSyncLockという技術を使っています。3Gケータイを通じて入手したワンタイムパスワードをPCの画面に入力してログインする仕組みなのですが、スマートフォンだとその認証システムが使えないんです。

 ただ、同時に顔認証システムも使っているんですね。アップルの技術が追い付いてきて、iPad2ではCCDカメラが搭載されたので、これを使えば本人確認できるということを踏まえて、eラーニングの環境を提供することになったのです。

ah_saiba3.jpg iPad2のCCDカメラを利用した顔認証。小テストを受ける際などに、サーバに登録したマスターと照合する

 サイバー大学の学生の7〜8割は社会人学生で、しかもIT業界にすでにいる人がかなり多いです。彼らの学習上の一番の問題は時間の確保なんですね。

 家に帰ってからPCを立ち上げて勉強するというより、通勤途中や昼休み、外出先の隙間時間で勉強できるとかなり有効だろう、とiPhoneでの実証実験から予測していました。ただし、それなりに高機能のモバイル環境でないと、しっかりした学習効果はあげられないという結果も出ていたので、iPad2を使って学習できるようにしようと決めたんです。

 サイバー大学を4年間で卒業する人は、まだ全体の半分以下です。しかし、そういった細かいアクセスを積み重ねて年間30単位程度を取れるようになれば、普通の大学と同じように4年間で卒業できる人が増やせると思っています。

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