明らかにすべきこと、それは「東電とマスコミ」の関係相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年01月12日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『双子の悪魔 』(幻冬舎文庫)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 過日、TwitterのTLを眺めていたところ、ある記事が盛んにリツイートされているのが目に入った。東京電力と与野党の重鎮議員の"蜜月ぶり"を暴いた記事がそれ。原発事故後の同社と永田町への不信感から、多くのユーザーが憤りの言葉を交えてリツイートしていたのだ。ただ、筆者は全く別の観点からこの記事を読んだ。「東電と議員」を「東電とマスコミ」に置き換えても、同じような構図が浮かび上がってくるからだ。

“天に唾”の真意

 本題に入る前に、しばしおつき合いいただきたい。

 1998年3月。筆者が通信社記者として日本銀行の金融記者クラブに所属していたときのこと。当時の上司が筆者を含めた若手記者に言った言葉を今も鮮明に記憶している。

 「天に唾するようなものだから、社会部にあまりネタを出すな。それにアル原(アルバイト原稿=週刊誌などに寄稿や情報提供すること)もしばらく自粛するように」――。

 この時期は、市中銀行からの過剰接待問題が表面化し、中央銀行である日銀が揺れにゆれていた。東京地検特捜部が日銀本店を強制捜査し、逮捕者も出た。

 もちろん、筆者が勤務していた通信社でも地検担当の社会部記者が連日連夜、日銀を取材し、接待に関する情報を収集していた。

 当時の上司が言いたかったことはこうだ。

 『我々(経済部記者)も多かれ少なかれ接待を受けている。キレイごとを言っていると刺される(ネタにされる)から気をつけろ』。

 本コラムでなんども触れてきたが、筆者自身も取材対象企業と飲食を共にし、料金を支払ってもらった経験がある(のちに必ずおごり返した)。古巣の上司のように、キレイごとを言う資格はない。

1998年、市中銀行からの過剰接待問題が表面化し、日本銀行が揺れた
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