オカシイはオモシロイ――ARは“マッドネス”で広めよう!郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2012年01月12日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 スマートフォンをカタログの女性にかざすと脱いでくれる。そんなアプリがウケて、売り上げが前年同月比37%増となったアパレルチェーンがある。

 それは、本店がミシガン州にある、アウトドア衣料小売店のMoosejaw(全7店舗)。AR(拡張現実)を用いたアプリとカタログを、2011年11月にリリース。iPhoneかiPad、もしくはAndroidケータイに『Moosejaw/X-Ray』アプリをダウンロードして、印刷カタログにかざすとあら不思議、洋服を着たモデルが下着姿になるのだ。

『Moosejaw/X-Ray』アプリ

 5週間でアプリは7万5000ダウンロード、TwitterのRT数は100万を超えた。「洋服を買うのに、その服を脱がすってどうなの?」と言いたいが、やっぱりそれがウケたのだろう。

 ARは日本でも、セカイカメラなどで話題となっていた。だが、「ARで売れた」という話は初耳だ。そこで、MoosejawのGary Wohlfeillさん(クリエイティブ・ディレクター)にウケた理由について聞いてみた。

 「Moosejawはユニークな手法で顧客を楽しませるブランドです。裸が面白いから服を買ってくれたとは思っていません。僕らが“お店”というより“面白い友人”のような存在だと考えてくれたからじゃないでしょうか」

 なるほど、確かに友人が裸になるとドキドキ……違うか(笑)。Garyさんは「『Moosejaw/X-Ray』アプリには2つの狙いがある」と言う。

 「1つは、印刷マーケティングとデジタルマーケティングのギャップを埋めたこと。もう1つは、“面白さ”を提供したことですね」

 彼らはリアル店舗での販売だけでなく、印刷カタログでの通販も行ってきた。普通は「印刷カタログをオンライン化しよう」と考えるが、Moosejawは印刷かオンラインかの二者択一でもなく、2つを結び付けることにした。その接着剤がARだったというわけだ。

 スマートフォンが普及した今後、いよいよARが流行るとも言われる。そもそもARって何だろうか?

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.