第3回 足あと廃止は改悪なのか、進歩なのか――ユーザーコミュニケーションの重要性短期集中連載・mixiはどこへ行く?(2/5 ページ)

» 2011年12月30日 06時45分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

足あと機能変更の狙い

ミクシィ副社長原田明典氏

――足あと機能は古参のmixiユーザーにはなじみがあり、良くも悪くもmixiを特徴付ける象徴的なサービスだと思います。機能変更の狙いを教えていただけますか。

原田 狙いはシンプルです。友人のコンテンツを見に行くときに、足あとがつくのが気になって遠慮がでたり、(訪れる)ハードルになる、そこを軽減できないかと思っていました。すでに、訪問しても足あとがつかないがサービスが増えていたというのもあります。例えばプロフィールと日記、フォトのページには足あとが付くけれど、mixiボイスやmixiアプリ、ボイスに付いているフォトには付かなかったんです。そういう意味で、足あとは必ずしも訪問者を正確に把握できるサービスではなくなっていました。

 気になっていたのは「フィードバックが先払い方式になっている」ということです。自分が見たコンテンツに対して、仮にいいと思っていなくても、見に行けば何か(足あと)が自動的に付く。「足あとがついた以上は何かリアクションしなくちゃ、コメントでも書かなくちゃ……」という話があったんですね。

 今なら「イイネ」機能などもあるので、まずは気軽に見に行って、その上で自分が反応するかどうかを決めることができる。フィードバックを後払いにできるんです。でも、足あとだと手前で判断しなくてはいけない。その『重さ』が足あとの課題だと感じていました。

足あとページのUUの7割が削除目的だった

――足あと機能については、肯定する人も否定する人もいますね。ないと困る、という人がいる半面、「足あとが付いているのにコメントを付ける、『読み逃げ』は失礼だ」といったことを言う人もいるようですが。

原田 もしそれがあるとすれば、コミュニティ機能をよく使い、バーチャルな人間関係のやりとりに長けた、PCネットに慣れたユーザーでしょうね。「お作法」として。リアルな友達とmixiを使っている人であれば、足あとが付いていてコメントがなくても、実は失礼だなんて話にはならない。足あとが付いているだけでうれしいですから。

 それよりも、ユーザーが誰かの日記を見に行くときに、例えば日に3回も4回も見に行ったらタイムスタンプも更新されるし、プレッシャーになる。そのため、自分が付けた足あとを消せる機能を追加した……この変更が、足あとに関しては一番の転換点だったと思っています。

 足あとページのUU(ユニークユーザー)を調べたところ、UUの7割が削除目的のためだったんです。7割が自分の足あとを消すために見に行くようになってしまっていた。それは、それだけ足あとが重くなってしまっていたということです。これを軽くしたかった。一方、足あとのいいところは、自分が書いたものや共有したものを見てもらった感にあります。ここは残したい。

 単純にこの2つのバリューを共存させられないか、ということだけです。友人の訪問履歴は残しつつ、何回か見ても、合わせて1回にカウントするようにしよう。足あと機能改修の狙いは、ここに尽きます。

――ただ、それまでリアルタイムで見ていたのに比べると、スパンが1週間というのは長すぎる気がします。

原田 1週間と極端に長くしたのは、初めはそれくらい長くしないと、「足あとがつかなくなったことで、足あとの重さがなくなったよ」という意識が醸成できないだろうと思ったからです。期間の調整は必要だと考えています。

――足あとを消すというのは悪いことばかりではないと思うのです。普段は足あと機能を肯定的に使っている人でも、例えば友達承認するかしないか微妙な関係の人などに対してだけ足あとを消す、といったケースもあると思います。逆に「消せなくなって困る」という声もあるのでは?

原田 (足あとが必要だという人にも)「足あとを消せる」というニーズがあるということは、我々も把握しています。でもその前に、「足あとを消すことで本当に回遊率が上がっているのかどうか」というデータを見ています。実際に1週間に伸ばしてから、高校生や大学生など若いユーザーの回遊率は上がっているんです。つまり、一定の効果は出ているといえます。

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