ところが。3月11日を機に、デジタルサイネージ業界は、あらためて自分自身を見つめ直すことになった。節電の要請。自粛ムード。灯火の消える都会。そんな中でサイネージはどう身をこなせばよいのか。業界は悩んだ。考えた。議論した。
首都圏では一斉にスイッチを落としたサイネージも、世間が平静を取り戻すにつれ、徐々に点灯していった。被災地及び全国で必要な情報をお届けできるよう努めた。平時でも災害時でも社会の役に立つメディアへ成長したい。そう考えた。
そこで、2011年、日本のサイネージには、またも新たなトレンドが重畳してきた。「べんり+つながる+みんな」の3傾向である。
役に立ちたい。街のあちこちで災害情報や電力消費状況を表示したり、学校や病院でも働いたり。広告メディアから働くメディアへの拡張だ。
ネットワークでつながっていなけりゃメディアじゃない。スタンドアロンの看板型が多かったのだが、ブロードバンドや地デジとつながって、街を面的に被うシステムになる。オフィスや家の中もマルチデバイスが連結する。
ソーシャルサービスと連携したり、誰もが簡単にコンテンツが作れたりするメディアへ。プロが作るコンテンツから、みんなで作るコンテンツへの展開だ。
この傾向は早くも6月に開催された展示会「デジタルサイネージジャパン2011」でも明確に見ることができた。
役立つ系では、大日本印刷や凸版印刷などが大学、病院、行政、オフィス向けのサイネージを提案。PDC社は災害時にも働く太陽電池のサイネージを展示。
つながる系では、家庭内を対象とするNTTの「ひかりサイネージ」や、日立の「クラウド」サイネージなど、サイネージがインターネットメディアであることが鮮明に。地デジの電波で配信するモデルも複数見られた。
みんな系では、Twitter災害情報の表示システムなどソーシャルメディアと連動したモデルやサイネージ向けコンテンツ制作ツールなどが提案されていた。
こうしたトレンドが定着するのはこれからだ。でも恐らく、来年の展示会ではまた新しい傾向が台頭しているだろう。それほどサイネージの進化は高速だ。当面、目が離せない。
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