コラム
» 2011年12月29日 08時00分 UPDATE

チャンスは心構えした者にほほえむ――“セレンディピティ”を大切に (1/2)

チャンスはこの空間に無数に行き交う電波のようなものである。感度の良いラジオなら、いろいろと音がつかまえられる。感度の悪いラジオだと、ほとんど何も受信できない。

[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 私が行っている研修でお客さまから強く支持をいただいているのが、『キャリアダイナミクスゲーム』(通称:レゴブロックゲーム)です。これは「仕事を成すとは何か」「キャリアを形作っていくとはどういうことか」を比喩(メタファー)を用いて学んでいくゲームプログラムです。

 自分の能力資産(知識、技能、人脈、コンピテンシーなど:これをレゴブロックで置き換える)を増やしながら、時には減らしながら(自己研鑽を怠って、一度習得した能力資産を陳腐化させ死なせてしまうこともある)、それで何を作品作り(=仕事・プロジェクト)していくかを、20代から50代までのステージを経ながら、動的・自律的にキャリアをシミュレーションしていくものです。

 職業人向けのキャリア開発研修にレゴを使うという発想はどこから得たか──それはまったく偶然のことでした。

 子どもの環境教育を行っているあるNPOが、チームワーク力を養成するための演習としてレゴを使っている場にたまたま居合わせたのです。そのときは単に「ああ、玩具もそういう使い方ができるんだなー」程度の受け止めだったのですが、その日以来、「大人向けにも何か展開が可能なんじゃないか」という考えがどんどん膨らみ、8年前に新規開発のプログラムとして完成させました。毎年、改良を重ねて現在に至っています。

 あの時のNPOでのレゴとの出合いは、偶然だったのか、それとも必然だったのか……。今、振り返ると、それは「必然」だったように思えます。まさに自分にとって、大きな「セレンディピティ」でした。

執念がチャンス感度を鋭くする

 「チャンスは心構えした者の下にほほえむ(Chance favors the prepared mind)」――ルイ・パスツール(細菌学者)

 科学の世界での偉大な発明や発見というのは、偶発の出来事がきっかけとなることが多いと言います。例えば、A液をあろうことかまったく実験に関係のないB液のビーカーに偶然落としてしまった。すると、そこで思わぬ物質が発見された! とかそんなような偶発です。

 ですが、それは本当に偶発なのでしょうか? 「いや違う。そういったチャンスは自分が呼び込んだものなのだ!」――こう主張するのが細菌学者パスツールです。ノーベル賞を受賞する科学者たちの多くは、この言葉を身で感じています。

ah_nau1.jpg 『物理屋になりたかったんだよ』

 2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊先生も、自著『物理屋になりたかったんだよ』の中でこう書いています。

 「確かに私たちは幸運だった。でも、あまり幸運だ、幸運だ、とばかり言われると、それは違うだろう、と言いたくなる。幸運はみんなのところに同じように降り注いでいたではないか、それを捕まえるか捕まえられないかは、ちゃんと準備をしていたかいなかったの差ではないか、と」

 私はこれを次のように解釈しています。

 世の中には、実はチャンスがいっぱいあふれている。目に見えないだけで、そこにもあるしここにもある。それは例えば、この空間に無数に行き交う電波のようなものです。電波は目に見えませんが、ひとたび、ラジオのスイッチを入れれば、いろいろな放送局からの音声が受信できる。感度の良いラジオなら、少しチューニングダイヤルを回しただけでいろいろと音が入ってくる。逆に感度の悪いラジオだと、ほとんど何も受信できないか、不明瞭な音声でしか聴くことができない。

 1つの仕事に執念を持って取り組んでいる人は、その仕事課題に対する感度がいやおうなしに鋭敏になってきます。すると、チャンスをさまざまに受信しやすい状態になる。逆に、漫然と過ごしている人は、一向に感度が上がらない。だから、チャンスはそこかしこにありながら、それらを素通りさせるだけで何も起こらない。性質(たち)の悪い人になると、「自分には一向に運がないのさ」と天を恨んだりする。

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