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» 2011年12月29日 08時00分 UPDATE

野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン:カードバトルのソーシャルゲームが強い理由 (1/2)

最近、なぜカードバトルのソーシャルゲームが多くリリースされるのか。日本のソーシャルゲームの課金率の高さを、携帯カードバトルゲームから読み解く。

[野島美保,Business Media 誠]

「野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン」とは?

ゲームは単なる娯楽という1ジャンルを超えて、今や私たちの生活全般に広がりつつある。このコラムでは、ソーシャルゲームや携帯電話のゲームアプリなど、すそ野が広がりつつあるゲームコンテンツのビジネスモデルについて、学術的な背景をもとに解説していく。


 2011年は、GREEの東京ゲームショウ出展やDeNAの球団買収など、ソーシャルゲーム企業が何かと話題になった年であった。今年のソーシャルゲーム市場の活況は、携帯端末のカードバトルゲームによって支えられた。コナミの『ドラゴンコレクション』のヒットをはじめとして、各社から次々とカードバトルゲームがリリースされた。

ah_nozima1.jpg 『ドラゴンコレクション』(出典:コナミ)

 こうした日本の動きは、本家の米国市場とは異なる独自路線となりつつある。PCベースの米国ソーシャルゲームの課金率はさほど高くはなく、Zynga社では3%と報告される。米国企業の収益の高さは、課金率ではなく母体となるユーザー数によって支えられる格好だ。一方、日本の携帯ソーシャルゲームは、10%超を記録する課金率の高さが特徴である。

 これまで日本のソーシャルゲーム各社は、米国市場に追いつくことを目指してきた感がある。しかし、知らぬうちに日本の方がマネタイズについて一歩先を行っていたというのが、筆者の印象だ。

 携帯端末は画面が小さいことから演出上の制約があり、加えて、移動中など片手間に操作をすることからゲーム操作にも制約がかかる。それにも関わらず、PCソーシャルゲームよりも高い課金率を叩き出したのである。今回は、現在市場をけん引しているカードバトルゲームの強さについて、考えてみたい。

カードバトルゲームの本来の魅力

 カードバトルゲームは、『遊戯王』に代表されるように紙のカードの時から人気だが、カードがデジタル・アイテムとなったソーシャルゲームによって利用者が一気に広がった。

 カードバトルゲームの魅力は、短時間で勝負がつく点と、多様なカードがもたらす戦略性にある。自分が持っているたくさんのカードからバトルに使うものを選び、それをデッキ(山札)にセットする。相手も同じようにデッキを用意して、勝負となる。

 バトル自体は1回ごとに勝負がつくので、短時間で終わらせることができる。一方で、カードの組み合わせによって多様な効果やルールが出てくるという、ゲームの奥行きもある。プレイの気軽さと多様性という相反する魅力を兼ね備える点が、カードバトルの魅力である。

短時間で演出するエントランス

 カードバトルのソーシャルゲームは、なぜ急速に成長したのだろうか。筆者は、カードバトルゲームの本来の魅力が、ソーシャルゲーム化することで増幅されたからであると考える。「1.ゲームのエントランス」と「2.課金フェーズ」に分けて、考察したい。

 ゲームのエントランスは、ゲームの世界観を伝えるオープニング映像やゲーム操作を習うチュートリアルなどから成り、ゲームの進化に伴って凝った作りになる傾向があった。ビデオゲームではオープニング映像に多額の制作費がかけられ、MMO(多人数参加型オンラインゲーム)ではクリアするのに数時間かかる立派なチュートリアルが作られた。

 それに対して携帯ソーシャルゲームに求められるのは、何よりも所要時間の短さである。新しいゲームを始めても数分後には電車の乗り換えで中断するような状況である。しかも、暇つぶしにアクセスした関心の薄い人には、長いエントランスに付き合う忍耐強さを期待できない。

 基本無料のビジネスモデルでは、ユーザーに「明日もアクセスしたい」と思わせ続けて利用継続者を保ち、その上で「金を払ってでもしたい」と思うユーザーをどれだけ作り出せるかが勝負となる。つまり、課金率を上げるには、まずはエントランスでの脱落者を減らさねばならない。

 しかし、翌日もアクセスしたいという没頭を生み出すのに、数分というリミットはあまりに厳しい。面白さを体感してもらおうとすると、つい長くなってしまう。独自性の高いゲームであればなおさら説明が必要だ。

 その点、カードバトルゲームの場合、基本的なルールはどのゲームでも変わりがないので、細かな説明がなくても先に進むことができる。筆者は最近、各社ゲームのチュートリアルばかりをプレイしている。数多く見ていくと、チュートリアルといえども一様ではなく、簡潔でありながら手ごたえのある秀作が存在する。しかしながら、カードバトルゲームの場合、秀作と駄作の差が比較的小さいように感じる。カードバトルという土壌に乗ることで、分かりやすく簡潔なチュートリアルにしやすいようである。

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