2012年、企業が注目すべきは“感情”という動力(2/2 ページ)

» 2011年12月28日 08時00分 公開
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幸せを届ける会社

 講演の中で、トニーはきっぱりと言っています。

 「ザッポスの使命は、幸せを届けることです」

 ザッポスでは、その「幸せ」を受け取る対象を、顧客だけではなく、社員や取引先、そして社会全般にまで広げています。そして、その動機はまさしく「人を幸せな気持ちにさせるため」なのです。決して「もっと買ってもらうため」が動機になっているのではありません。

 優れた顧客サービスについては、いろいろな本が書かれています。しかし、これらの本の多くが焦点を置いているのは「より多くの顧客にリピート購入してもらうため」「口コミしてもらうため」「売り上げをあげるため」に顧客サービスを良くする、ということです。

 ザッポスでは、これとはまったく異なる姿勢をとっています。

 ザッポスが目指しているのは、あくまで「人に幸せを届ける」ことであって、その副産物として、「リピート購入」「口コミ」「売り上げ」が付いてくると考えています。この2つは、似ているようでいて実は大違いです。

 先に述べたのは「サービスのROI」という考え方です。「優れたサービスを提供することで見返りを得る」という考え方をするとどうなるかというと、「見返りがない」と判断した途端にサービスの提供をやめることになります。

 例えば、たくさん買ってくれる人を「優良顧客」と定義して、サービスに差を付けるとか、そういうことが起こります。この発想がそもそもザッポスにはないのです。

 実際に靴を買ってくれる気がなさそうなお客さん相手でも、その人を「ハッピーにするため」に必要とあらば8時間半も電話に付き合ったりします。「ROI」という発想だったら到底できないことですよね。

感情という動力

 すべての会社がザッポスの真似をしなくてはならないというわけではないし、真似しても優位性にならないと思います。

 そこを十分よく理解していただいた上で、強調したいことは「人類の歴史の中で『感情』は常に大きなドライバー(動力)であったし、これからのビジネスでは『感情』が最も大切な戦略的資源となる」ということです。

 社員の感情、お客さんの感情、パートナーの感情。ポジティブな感情が集まれば、そこに大きな動力が生まれます。

 昨今、話題になっているソーシャル・コマースも、SNSを利用してモノを売るか否かが焦点になるのではなく、人の「感情」が動力となってモノ/サービスが売れる、ということが焦点ではないかと思っています。2012年に追求していきたいテーマのひとつです。(石塚しのぶ)

 →石塚しのぶ氏記事バックナンバー

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