テレビに未来がない? ウソだと思う遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/5 ページ)

» 2011年12月26日 18時21分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]

 大学生に「なぜテレビを持っていないのか?」と聞くと「下宿するときにテレビを買わないのですよ」と言われた。それだったら、32インチでネット契約込みの「0円テレビ」なんてことを、私なら考える。しかし、そのように必需品ではないという層が出てきてはいるものの、テレビというのはまだ全体としては若者たちが接しているメディアなのだとも言える。

 図2は、先日、あるテレビ関連のセミナーで、まさに「若者のテレビ離れ」に関して紹介させていただいたデータの一部である。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体、DVD/Blu-Rayレンタル、ネット動画の視聴時間を性・年代別に集計している。若者がいちばん接していないのは新聞とラジオである。特徴的なのは、40代オタク世代に支えられた雑誌とDVD/Blu-ray Discだろう。

図2 年代別のメディア接触状況。テレビ、ネット動画、映画、DVD/Blu-ray、新聞について、年代別の接触状況を集計してみた(アスキー総合研究所「MCS 2011」より)。テレビと、とりわけ新聞では、世代が下がるにつれての接触率の下落が顕著だ。一方で、ネット動画の視聴時間については、20代男性が突出している

 特に気になるのは20代男性で、1日に平均19分ほどネット動画を見ていることだ。これは20代男性全体の平均値で、「ネット動画を見ている」20代男性に絞った平均では1日に1時間以上にもなる。スマートフォンやソーシャルメディアも20代の利用率が高く、やはりネットが若者たちのテレビ離れの原因となっていると思える。ところが、そのセミナーの後の懇親会で、テレビ業界に長い方に「昔から《若者のテレビ離れ》というのは言っていたのですよ」と言われてしまった。

 1人の人間に与えられた時間と空間とお金は限られていて、それをさまざまな生活用件がシェアしている。1970年代までのテレビの黄金時代ならいざ知らず、「ゲーム」がテレビの時間を食ったこともあるし、「携帯電話」がテレビの時間を食ったこともある。「レンタルビデオ」がテレビの時間を侵食していたのもあるだろう。私は、その話を聞いていて「テレビ離れ=テレビの視聴時間」とだけ計算していた自分が恥ずかしくなった。

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