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» 2011年12月26日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:北朝鮮はそんなに簡単に崩壊しない (1/2)

金正日総書記の急死で「北朝鮮の独裁体制が崩壊するのでは?」という期待が高まっています。しかし、ちきりんさんは「北朝鮮はそんなに簡単には変わらないのでは?」と分析します。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2005年5月12日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 金正日総書記の急死でにわかに「北朝鮮の独裁体制が崩壊するのでは?」という期待が高まっていますが、ちきりんは北朝鮮はそんなに簡単には変わらないと考えています。

ah_tiki1.jpg 朝鮮民主主義人民共和国公式Webサイト

 「飢えに苦しむ多くの人たちが耐えられなくなる」とか「独裁体制に不満が溜まって暴動が起こる」という形での体制崩壊は、残念ながら北朝鮮では起こらないでしょう。

 アラブや中東などとは異なり、一般人民は恐怖政治で過激な動きなどとれません。戦時下の日本もそうですが、ちょっと変な動きがあればすぐに秘密警察にしょっぴかれるわけで、国の体制をひっくり返せるような暴動が起こせるとは考えにくいです。せいぜい亡命が増えるくらいでしょう。

 それに、国全体が飢えていても権力側の人には何の関係もありません。「食べるものもないのに、国がもつわけがない」という考え方は素人です。国がいくら貧しくても、権力者はちゃんと食べているのです。

 政権を支えている軍部のトップだって権力者側ですから、今の体制が崩壊して自分たちに得なことは何もありません。民主化や平和は、軍部にとって望ましい状況じゃないんです。彼らは平和になったら失業してしまうし、今持っている特権的な立場も失ってしまいます。

 そして北朝鮮が簡単に崩壊しない最大の理由は、北朝鮮だけでなく“関係国全部”が、北朝鮮の現体制が続くことを期待しているという点にあります。韓国も中国も北朝鮮の崩壊なんて望んでいないのです。

 だって北朝鮮が崩壊したら韓国は本当に大変です。ベルリンの壁崩壊前、西ドイツは世界第3位の経済国で、かつ東ドイツも共産国としては優等生であったドイツでさえ、統一後は大変苦労しました。韓国が北朝鮮を丸抱えするのは負担が大きいでしょう。

 一方、中国も北朝鮮の崩壊を全力で阻止したいと思っているはずです。北朝鮮が崩壊すれば、韓国ほどではないにしても移民の受け入れなど、中国にも甚大な経済的負担が発生します。

 さらに、中国は鴨緑江沿いに長い国境を北朝鮮と接しています。韓国が北朝鮮を併合してしまうと、この泳いで渡れる川の向こうにいきなり韓国が出現するわけで、今までは「北朝鮮から中国に人が逃げてくる」方向でしたが、それがいきなり反対に変わってしまうかもしれません。

 加えて、在韓米軍は川のすぐそばに中国に向けたミサイルを配備できるようになります。「米軍が自由に移動できる韓国」という国と、長距離にわたる国境を接することになるのは、中国にとって何としてでも避けたいことでしょう。

 中国は、できるならば北朝鮮にも自分たちと同じように、ソフトランディングによる資本主義化を進めてほしいと思っているでしょうが、一方でそれが難しいことも理解しているはずです。

 いったん国を(経済的に)開放するといろんな情報が入ってきます。そうすると経済的自由の次に、人々は政治的・思想的な自由を求め始めます。

 中国でさえ、そういった自国の体制への反発を“反日”にすり替えることで国民の不満を懐柔せざるを得ない状態です。それよりずっと厳しい状況にある北朝鮮の場合は、いったんタガを外すと“反日運動”へ不満を向かわせるくらいでは収まらないレベルのフラストレーションが噴出するでしょう。

 中国としては、「北朝鮮を親中国・反米の国のまま、崩壊させずになんとか維持したい」というのが本音だと思います。

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