「絆」というキーワードが、危険な意味を含んでいるワケ津田大介×鈴木謙介、3.11後のメディアと若者(6)(5/5 ページ)

» 2011年12月21日 08時02分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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津田:仲のいい地元の友達というのは、持っている社会資本が似ている。なので問題を解決することが難しくなる。問題は解決できないけれども、たまたまソーシャルメディアでつながっている大企業の社長に相談したら「ん? そんなことで悩んでいるのか。こうすればいいのでは」というアドバイスが的確だったりする。

鈴木:誰かひとりが「オレ、音楽作れるよ」というと、「オレ、DJできるよ」「オレ、イラスト描けるよ」と、いろんなことをできる人が集まり、イベントができたりする。

 こうした関係性は、社会科学の中では「弱い紐帯(ちゅうたい)」の効果としてよく知られていて、社会問題を解決するために必要とされています。見知らぬ人たちだけれども、自分たちにないものを持っている人たち。だけどその人たちを受け入れることの意味について、これまであまり議論されてこなかった。

 お金で解決できる社会からお金だけでは解決できない社会になったときに、お金の流動性を上げていままでお金が届かなかったところに届くようにする仕組み。こうしたシステムを津田さんは考えていらっしゃるようですね。

 僕はちょっと違っていて、お金だけでは解決できないことに対し、人を届けてあげる仕組みを考えています。

 そして津田さんが考えているシステム、僕の考えているシステム、この2つがうまく噛み合って回ってけば、成熟した社会になっていくのではないでしょうか。

津田:そうですね。

続く

プロフィール

津田大介(つだ・だいすけ)

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

鈴木謙介(すずき・けんすけ)

1976年福岡県生まれ。関西学院大学 社会学部 准教授。専攻は理論社会学。情報化社会の最新の事例研究と、政治哲学を中心とした理論研究を架橋させながら独自の社会理論を展開。著者『カーニヴァル化する社会』(講談社)以降は、若者たちの実存や感覚をベースにした議論を提起しており、若年層の圧倒的な支持を集めている。著者は『サブカル・ニッポンの新自由主義』(筑摩書房)ほか多数。現在、TV・ラジオ・雑誌などを中心に幅広いメディアで活躍中。最新刊に『SQ “かかわり”の知能指数』がある。


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