「好き」を仕事にする、ではなく「想い」を仕事にせよ(2/3 ページ)

» 2011年12月20日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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職業選択に「発想の展開力」を

 キャリアや人生をたくましく切り開いている人は、間違いなく「描くことができる人」です(実際には誰しも最初から明確に描くことはできないので、正確には「描こうとする人」「描くことに飽きない人」といった表現が適当かもしれません)。

 私がここで言う「描く力」とは、具体的には「発想の展開力」と置き換えることができます。

 例えば、自分が野球でもサッカーでもいいのですが、プロスポーツ選手を目指しているとします。実力と運に恵まれて、そうなれば一番よいのですが、プロスポーツの道も厳しいですから、そう簡単になれるわけでもありません。そして、事実、そうなれなかったとします。あるいは、いったんはプロ選手になれたが、その後ぱっとせずに引退を余儀なくされたとします。

 さて、その時、あなたは職業選択をどう考えるでしょうか――――?

 体育会系で協調性があり、人当たりがいいから、営業の仕事に就こう。あるいは、身体が頑丈なので作業現場の仕事なら大丈夫だ。こうした直接的な自分の強みと即効性を結び付けて考えるのは、決して悪くはありませんが通常の発想です。

 しかし、もう少し発想を展開してみれば、プロスポーツ選手に隣接する職業はさまざまに考えられます。次図はその一例です。

 自分の強みと追加技能や知識の修得を加えれば、プロ選手を脇から支えるトレーナーやティーチングプロはどうだろう、審判員はどうだろうとなります。また、興味・関心がつながるものとしては、球団の運営やスタジアムの運営、スポーツメディアの仕事、あるいは道具メーカーで商品開発などの仕事もあるでしょう。

 もちろん、これらの職に就くためには、新たに勉強して身につけなければならない技能や知識があります。しかし、そうした努力はどのみちほかの選択肢を採ったところでもやるべきことです。

 さて、発想はまだ発展します。もしあなたがスタジアムの運営に大きな興味を感じ、その関連で職を得たいと思ったとしましょう。

 そこで、また発想をします(ここでいう発想はもちろん、現実の情報収集も含んだ上での発想です)。すると、スタジアム運営の周辺にもさまざまな仕事が候補として浮かび上がってきます。球場ビジネスの経営、イベント興行の仕事、場内の飲食業、球場の営業の仕事、球場の保守の仕事、天然芝の生産の仕事などなど。これらの仕事について、いろいろと調べていくと、あなたの中でも新たな発見や興味が湧いてくることでしょう。

 次図の例は、あなたがその中でも、天然芝の管理ビジネスに高い関心を寄せ、さらにそれを追っていくうちに、ついにはグリーンキーパー(芝の維持管理者)の派遣ビジネスにたどり着くというものです。

 この一連の発想の展開で大事なことは、その発想の根底に、あなたのスポーツへの“想い”が流れ続けていることです。

 「自分はプロ選手にはなれなかったけれども、陰から名勝負が生まれることを助けたい。選手になりそこねたおかげで、その分、プレー環境や道具に関する選手の要望やかゆみが誰よりもよく分かる。たまたまその仕事に就いている人間には絶対負けない!」という想いです。

 自分の想いをメガネにして、いろいろな職業、職種、業界を見てみる。そうすると、予想外のつながりや展開が生まれてきます。先ほどの例では、プロスポーツ選手がグリーンキーパーの人材派遣ビジネスに展開しました。

 第三者が聞くと脈絡がありませんが、本人が自分の想いでつながっていればそれでいいのです。自分の中で、過去に培った経験や強みがすべてその仕事に生きてくれば、やがて周辺の人間も、お客さんも「なるほど、この人の作り出す商品・サービスは確かに違う」と気付くようになるでしょう。

 本人がプロスポーツ選手への道が絶たれた時、もし発想を面倒がり、体育会系で人当たりもいいから何でも適当に営業の仕事に就けばいいやと簡単に就職してしまったら、その後「俺はなんでここでこんなものを売っているんだろう?」という状況に陥ってしまう可能性があります。

 将来をあれこれ発想して展開するには、意志と努力が要りますが、それは将来の自分を助け、生かすために、今、重要な作業なのです。

 どのみち人生はもがかねばならないものです。ですが、その「もがき」を徒労に終わらせないために、私たちには「想い」が必要です。想いの下にもがいていれば、必ず自分の山が見えてくるものです。

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