ジャーナリストの津田大介さんと社会学者の鈴木謙介さんによる対談連載5回目。今回は「20〜30代とSNSの関係」「今の大学生に期待していること」などをテーマに、2人が語り合った。
津田:僕は10年ほど前から、ずっと同じことを言っています。例えば音楽業界のことについては『だれが「音楽」を殺すのか?』(翔泳社)という本に詳しく書かせていただきました。同じことを言い続けているけれども、言っているがゆえに聞いてもらえなかった。「君の言いたいことは分かる。でもねえ」と言われてきました。
しかし今年になって、ちょっと変化が出てきたんですよ。音楽業界で働くある人はこのように言っていました。「音楽はネットで無料で聞けるようにして、それをプロモーションにしていけばいい。そしてCDを売ればいいんじゃないか」「津田君の言っていたことが案外正しいのかもね」とか言われる(笑)。
鈴木:いまさらながらに(笑)。
津田:いまさらながらに言われると、逆に脱力してしまう。
鈴木:ハハハ。
津田:僕は音楽業界の敵のような存在でした。しかしTwitterで注目されるようになってから、こんな風に言われるようになりました。「すいません、歌手のプロモーションをしたいんです。できればTwitterで行いたいのですが、お願いできませんか」と。
こうしたことを言われると、ものすごく苦々しく感じます。しかし俯瞰(ふかん)してとらえれば、フリーで生きている人間にとって「人に話を聞いてもらえる」――これはものすごく大きなメリットですね。
今は、世の中が混乱しています。混乱しているときには、多くの人が「どうすればいいのか?」と不安に感じています。こうしたときには「話を聞いてもらえる」範囲が広がるのではないでしょうか。
鈴木:ですね。僕のような人間ですら、霞ヶ関に呼ばれる時代ですから(笑)。
津田:「フリーになんかなるべきじゃないよ」と言いつつも、そういうところで勝負したい人にとっては、今はチャンスなのかもしれません。
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