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» 2011年12月19日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:日本の財務危機、誰がリーダーシップを発揮するのか? (1/2)

民主党の「社会保障と税の一体改革調査会」が社会保障改革素案に盛り込む内容を公表したが、結局、国民の負担を増やす改革は軒並み先送りになった。その一方、国債を取り巻く環境はどんどん厳しくなっているが、誰がこの状況を打開するのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 もう民主党に日本を変革することを期待するのは止めたほうがいいのかもしれない。

 民主党の「社会保障と税の一体改革調査会」が社会保障改革素案に盛り込む内容を公表したが、結局、国民の負担を増やす改革は軒並み先送りになった。もちろん社会保障そのものが十分手厚いわけではないのだから、国民の負担を増やすことがいいわけではない。しかし何の展望もなく給付を増やす、あるいは負担増を先送りすれば、それでなくても積み上がっている国家の借金をさらに積み上げることにつながる。

 これでさらに消費税増税を含めて年内に素案を得るという野田首相の大見得を果たして実現することはできるのかどうか疑わしい。そもそも、問題は政府の予算は政策経費で71兆円であるにもかかわらず、44兆円もの国債を発行しなければならないという財政構造にある。この財政構造を変えていくと言っても、税収を上回る借金生活はそう簡単に変わるものではない。

 その一方、国債を取り巻く環境はどんどん厳しくなっている。欧州では国債をECB(欧州中央銀行)が買い取るなどして何とか国債の暴落を防いでいるが、その一方で、EU(欧州連合)とりわけユーロ圏内で債務危機を解決する根本的な対策に取り組んだ。それは各国の予算について欧州委員会が監視をし、もし義務違反があれば自動的に制裁を発動するというものである。

 各国の主権を制限することになるわけで、これが長期的に成功するかどうかは時間をかけなければ分からない。しかし少なくともドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領の政治的な意思と決断があったことは事実である。とりわけメルケル首相は「この債務問題を短期的に解決することはできない」と主張して、ECBによる国債の買い入れを無制限に増やすとか、ユーロ圏共通債といったアイディアを退けた。

ah_huzita1.jpg ECB公式Webサイト

 今の日本に必要なのは、こうした政治的なリーダーシップなのだが、目先の消費税引き上げだけでも民主党内の足並みがそろわない。もし国民の負担を重くするという選択をすれば、2009年に当選した140人を超える新人議員のうち、いったい何人が永田町に戻って来ることができるか。その悪夢が民主党を覆っているのである。実際、小泉チルドレンと呼ばれた2005年総選挙で自民党に大量に出現した新人議員のうち2009年に生き残ったのはほんの一握りである。

 減税を売り物にして再選を果たした河村たかし名古屋市長と異なって、橋下徹大阪市長は「必要ならば増税もする」と主張した。実際、日本の国民負担率は先進国の中でも高いわけではない。医療や介護、年金といった社会保障の枠組みが疲弊していることを考えれば、どうしてもここで負担を増やし、給付を減らすことを考えなければならない。そして国民背番号によって、年金も医療も介護も管理するような仕組みを導入し、少しでも無駄を減らすという努力が必要であるが、同時に、負担を増やすことについて国民が納得してくれるよう求めなければならないのである。

ah_huzita2.jpg 橋下徹大阪市長は会見の生放送もスタートする

 「もう待ったなしだ」というのが野田首相の口癖だが、民主党の「一体改革調査会」が掲げた原案では、給付を増やすことに熱心で負担を増やすことには慎重だ。しかし国の財政は、44兆円も借金をしなければならないのである。この重い事実をどう考えているのか。

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