会社員は何をもって「優秀」と言うのか吉田典史の時事日想(3/3 ページ)

» 2011年12月16日 12時29分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]
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「優秀」と言われている人の特徴

 ここまでを読むと、「全人格的な評価」は悪の象徴であるかのように感じ取る人もいるかもしれない。だが、私はむしろその逆の考えを持っている。

 ここで考えたいのは、この10数年間、成果主義が浸透し、メディアで盛んに「業績達成の重要性」が指摘されたことだ。それにともない、「全人格的な評価」があまり語られなくなった。

 その結果、日本企業が「業績」だけで社員の優劣を判断し、協調性や規律、リーダーシップなどを評価していない、という"誤解"が世の中に浸透してしまった。確かに1980年代までくらいに比べると、評価全体において行動評価の比率は下がっている。しかし、依然として日本企業では重要な評価項目である。

 さらに、一部の経営コンサルタントは、企業が「全人格的な評価」をすることによって「労働の生産性を低くする」「業績が伸び悩むようなる」といった指摘をしているが、これは事実なのか。もっと深い調査が必要である。「業績だけで優劣を判断する評価が、生産性や業績を向上させる」ならば、もっとたくさんの企業が成長していいはずだ。ところが、必ずしもそうとは言えない。

 私が38歳で会社を離れ、1人で仕事をするようになってようやく痛感したのは、仕事ができるに人はそれなりの人格者が多いことだ。少なくとも、その傾向はある。

 社内で「優秀」と言われている人は、協調性や規律、リーダーシップなどの面で他人よりも優れたものを身に付けている。その人との電話や、メールに書かれてある内容からも感じることだ。これは取材先でも、取引先にも言える。「人格者」とまでは言えないかもしれないが、何かが優れていることは間違いない。

 ただ漠然と、目の前の仕事をこなすぐらいでは、「優秀」とは言えないのだと思う。そして、周囲の人たちから人格や行動なども一目を置かれる人は、部内でも成績が上がりやすい、いわゆる"おいしい仕事"が与えられる傾向がある。つまり、おのずと業績が上がりやすいのだ。

 ここ10数年、私たちは業績だけに目を向けてきたが、実はそれ以上に、職場での言動に、そして上司や周囲との関係に気をつけるべきなのである。その姿勢や意識が、業績をグンと上げることになっていくのだから。業績が伸び悩む人は、まずは自身の発言や行動を振り返ってみたい。何かが、見えてくるはずだ。

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