組織が先か、ビジョンが先か?――橋下氏圧勝から若者が望んでいることを考える(1/2 ページ)

» 2011年12月16日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 先日行われた大阪市長選挙。橋本候補と平松候補の得票率は6:4だったが、大阪の街に漂う雰囲気は投票日のかなり前から橋下氏の圧勝だった。その雰囲気に対し、多くの関西の自治体の長や経済団体・業界団体のトップたちがネガティブなニュアンスで述べていたのは「組織を変えたいだけで、何をしたいのか分からない」「仕組みより、ビジョンや戦略を語れ」といったことである。

大阪市公式Webサイト

 確かに、掲げている大阪都構想は組織や仕組みの話であり、どのような大阪を目指すかではない。それに対して橋下氏は「組織や仕組みが今のままでは、どのような大阪を目指そうともそれを実現できない」と反論した。つまり、橋下VS.平松陣営という選挙は「組織や仕組みが先か、ビジョンや戦略が先か」という戦いであったと思う。

 「組織は戦略に従う」という言葉がある。「まず、実現したいことやそのための戦略があり、次に、組織をそれに則って組み立てるべきであって、現状の組織を前提として目標や方法を考えるべきではない」という主張で、確かに正論だ。

 しかし、対立候補が「組織論が先だと言う橋下氏は間違っている」と責めたのはおかしな話で、戦略や目標を立てたけれども、組織を温存した結果、目標が達成されなかった(口だけ、言っただけ)という大阪の歴史に対する反省がないのである。橋下氏は「戦略は組織に限定されてしまう」と言っており、そちらの方が歴史を振り返れば的を射ていたと言えるだろう。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した、企業の経営資源を表す「7つのS」というものがある。そのうち、ハードの3Sと言われるのが、「Strategy(戦略)」「Structure(組織構造)」「System(システム・制度)」であるが、それを用いれば、橋下氏は「Structure(組織構造)」と「System(システム・制度)」にメスを入れるべきだと主張した。対して、平松陣営は「Strategy(戦略)」が重要だと主張した。

 結果は、組織や制度を変えるべきだという民意が明確になった。そして注目すべきは、特に若年層が橋下さんを圧倒的に支持したことだ。若者は、「戦略には期待しない、それより先に組織や制度を変えてくれ」と言っているのである。

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