え、この記事が一面に? 日経型スクープの限界相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年12月15日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 日経の一面で扱われた際、企業の株価は大きく動く傾向がある。だが、同日のパナソニック株は、前日比1円安の685円で引けた。市場でこの報道が材料視された痕跡は乏しい。

 「海外市場に進出しない、あるいは携帯事業から完全に手を引くという報道だったら買い材料になったかもしれない」(欧州系運用会社のファンドマネージャー)との冷ややかな声も出ていた。要するに、パナソニックといえども、スマートフォン市場でのメインプレーヤーではないと市場がとらえているのだ。

 筆者自身、iPhoneを使用するまでは、パナソニック製の携帯電話を4台使い続けてきた。同社製品への愛着はあるが、スマートフォンに限っていえば、iPhoneの使い勝手を超えるものでなければ、買い替えるつもりはない。同じような感想を抱く向きが多いと推察する。

 パナソニックの戦略をくさす意図は一切ない。ただ、このトピックが果たして一面にくるだけのバリューがあるのか、筆者自身は日経の扱い方に疑問を感じたのだ。

日経型スクープの限界

 大きなニュースがない、あるいは独自ネタの少ない日は、新聞社は紙面作りに苦慮する。本来ならば産業面に掲載されるはずの素材が、ニュースの需給関係で一面に回ってくることはままある。

 だが、同日の日経紙面を見る限り、このような紙面繰りの関係でこのニュースが一面に載ったという印象は受けなかった。

 企業と親密な、誤解を恐れずに言えば、企業寄りの日経が、パナソニックの新しい戦略を「日経型スクープ」として報じた、と筆者は感じた。

 本欄で何度か触れてきたが、経済界、産業界で日経のブランド力はすさまじい。日経に自社の記事が掲載されれば、経済取材スタッフの少ない在京紙やテレビが、ほぼ自動的に後追い記事を出す。これが新製品や新たに導入するサービスであれば、「広告換算すれば数億円分に相当する」(某自動車メーカー幹部)。

パナソニックのスマートフォン「P-01D」

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