鈴木:この秋、『SQ “かかわり”の知能指数』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を出しました。この本は社会貢献意欲のことについて触れていて、SQとは「身近な他者への手助けによって、人がどのくらい幸せになるかを表す指数」のこと。IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)という指数は有名ですが、それになぞらえて社会性を求める気持ちなどを数値化し、分析しました。
よく「震災後、社会貢献意欲って強まっていますか?」と聞かれるのですが、「強まっていません」と答えています。
2005年ごろに「自己責任」という言葉が流行しました。当時、まずい状況に置かれていれば「自分のせいだ」と思い込んでしまう人が多かった。その後、派遣制度の問題が浮上し、2008年には秋葉原無差別殺傷事件がありました。そして「自分のせいではなくて、社会のせいではないか」という雰囲気になった。高齢者の孤独死、無縁社会、孤族(誰にも看取られることなくその生命を終えてしまう人たち)など、雇用だけにとどまらない幅広い社会問題も認知されるようになってきた。
こうした流れの中、「自己責任じゃないんだ。助けを必要としている人たちがいるんだ」といった意識をもつ人が増えてきました。例えば児童虐待防止のCMが増えたのは、虐待によって亡くなった子供がいて社会的関心が高まってきたので、そういう人を見かけたら「声をかけましょう」といった感じになったからですよね。またランドセルを寄付する伊達直人ブームがなぜ広がったかというと、最大の理由はそこに「手段」ができたから。
津田:そうですね。
鈴木:「この方法、オレも真似できるな」という人が増え、ブームが広がりました。
津田:「人を支援したいけれど、どのようにしていいのか分からない」――。そうした人は多かったと思いますが、ソーシャルメディアの利用者が増えることで、人と人とがつながり始めた。その結果、「このように支援すればいいのだ」と分かるようになり、多くの人たちは実際に行動することができたのでしょう。
鈴木:意識が変わったのではなくて、どのようにすればいいのかという手段が分かった。30代であれば「自分のことで精一杯でも、このくらいなら自分でも貢献できるかも」と感じられる手段を見いだす機会が増えていくのかもしれません。
津田:次に来るブームは何だろう? という質問に対し、僕は「寄付」と「NPO」ではないかと思っています。さきほどお話された鈴木さんの話と近いかもしれません。
鈴木:ですね。
津田:寄付やNPOに目覚めるというのではなく、それに対するアクセス手段が容易になることで、ブームが広がるということです。
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