ドラマ『家政婦のミタ』にあって『南極大陸』にないもの(1/2 ページ)

» 2011年12月14日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 この冬のテレビドラマは、松嶋菜々子主演の『家政婦のミタ』が視聴率でぶっちぎり。瞬間視聴率30%超えの話題は、10%台で右肩下がりの『南極大陸』とは対照的だ。この大きな差の原因は何なのかを考えてミタ。

『家政婦のミタ』にあって『南極大陸』にないもの

 どちらも、このご時世に欲しいヒーローの姿を描いているのに、どうしてこうも差があるのか。

 『南極大陸』では、日本の誇りのために、南極観測のために命をかけた男たちの姿を暑苦しいくらいに描いている。主演である木村拓哉は過酷な状況の中で、いつも叫んで壁を越え、しがらみを乗り越えて任務を遂行する。お金もかかっているし、決して悪いドラマではないと思う。涙することもある。しかし、リアリティがない……。

 東日本大震災の過酷な状況や自衛隊員の活躍を目の当たりにした我々視聴者にとって、50年以上も前の物語の再現をされても説得力がない。情熱だけで震災後の問題を突破できるなら、もうとっくに解決しているはすだ。

 TBS開局60周年記念らしいのだが、フジテレビ開局50周年ドラマとして放映された『不毛地帯』が大コケした反省が生きていない。視聴者のリアルな暮らしを感じ取るセンスに欠けている。大手マスコミ各社の経営陣は、大概が70歳前後である。ここにも、「昔は良かった」と言い続ける“老害”の影響が出ている。

『家政婦のミタ エピソード・ゼロ』

 一方、『家政婦のミタ』は非常に明解である。松嶋菜々子演じる家政婦は、情熱ではなくお金で動く。そして、無表情で完璧に業務を遂行する。出てくる登場人物は、不倫している父親にダメな息子や娘、家族の体をなしていない一家。そこらへんの身近かつハードな問題を、次々と感情抜きで解決していく。

 その対価は、「ありがとう」とかの感情や道徳ではなく、金銭的インセンティブ。消費社会の行き着いた先のあらゆる問題を、お金をもらって解決していく。これって、資本主義社会にふさわしいリアルなヒーロー像ではないだろうか。松嶋菜々子演ずる家政婦のミタさんは、「人間」ではなく、「商品=サービス」として描かれているのだ。

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