欽ちゃんからナベツネまで――脱・老害の傾向と対策(2/2 ページ)

» 2011年12月13日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!
前のページへ 1|2       

現役世代の民意は「脱・老害」

 現役世代の民意とは「脱・老害」なのである。

 保守とか革新とかよく分からない。右傾とか左傾とか、そもそも関係ない。思想や信条では、大衆は動かない。消費社会が成熟し、買いたいものが根本的に少なくなる。社会が高齢化し、行き詰まった先に現れてきたのは、世代間対立で動き出す民主主義国家なのである。

 民意が多数決で決定されるなら、日本はこれからずっと「老人のための国家」となる。「お年寄りたちの現在の幸福を支えるために、お年寄りたちが利権争いをする」、そういうことが続くことになる。この現実的なリスクへの対抗策が、若者たちのテレビ離れや消費意欲の減退という現象で現れている。「結局、お年寄りたちに利権やお金が集中していくなら、そんな手伝いなんかしていられるかっ……」、これがサイレントテロである。

 私もすでに49歳、初老の仲間入りである。お年寄りのすべてを悪く言うつもりはない。しかし、「老害」の人たちがこぞって口を揃える「昔は良かった論」には、素直にうなずけない。1953年生まれで58歳になる山下達郎氏は「最近、『音楽の質が低くなった。昔の音楽は良かった』という人がいますが、それは違います。昔も質の低い音楽はたくさんあった。低質の方が多かった。でも、それらは時とともに忘れ去られ良いものだけが残ってる今だから、『昔の音楽は良質のものばかり』という印象を受けるのです」と発言している。

 過去ばかりを美化すると、未来が衰退していく。その自覚がないのが「老害」の根本的問題である。みんな若い時があった。他人に言えない悪いこともした。年寄りのキレイゴトが大嫌いだった。そういうことを忘れたかのような振る舞いを、今を生きている若者たちが信用するわけがない。

 若いときの悲喜交々を忘れて我欲を語る「老害」が跋扈するほど、この日本の景気は冷える。ブレーキを踏むことを知らないアジアの脅威をバカにしかできないお年寄りたちが経済界を支えている内は、日本は本質的に開国できない。

 いまさら60歳を越えた人たちの意識を大きく変えるのは難しいだろう。であるなら、大事なのは私たち40代の役割である。「老害」と「若者たち」との間に挟まれた私たち世代の価値観や行動が、今後10年の日本の未来を決定するのではないかと考える。

 受験戦争も経験した。バブルも知ってる。リーマンショックでへこんだ。右肩下がりのこの時代に、役職をまっとうしている我々が、老害と呼ばれている人と同様に、利権を追い求めて右往左往するのか。世代間対立で動き出した民主主義の行く先を占うのは、私たち世代の価値観と美意識である。

 特に、私のいる広告業界の役職の人たちに多く見られる、「いまだに10代のころ憧れていたあの人と仕事したいみたいな仕事ぶり」には辟易する。その行く先は「老害」の何ものでもないっ。(中村修治)

 →中村修治氏のバックナンバー

関連キーワード

日本 | 帝国データバンク


前のページへ 1|2       

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.