ネットを専門とするニュース媒体が誕生してから、10年以上の時間が過ぎた。社会学者の鈴木謙介さんは「ネット媒体も歳をとったな」「まだ論調に、独自のカラーが出せていないのでは」と指摘。一方、ジャーナリストの津田大介さんは、注目しているネットメディアの名前を挙げた。そのメディアとは……。
鈴木:「ネットメディアも歳をとったなあ」「成熟してきたなあ」と感じています。
津田:ほー。
鈴木:十数年前、ネットメディアが立ち上がりの時期だったころ、僕は20代で、記者も20代の人が多かった。しかし最近は記事を作っている記者も、そして読んでいる僕も大人になってきた。
もし欧米のように市民メディアの歴史があれば、市民活動の一環としてカメラを持って、取材に行って、記事を書くこともあるでしょう。しかし日本ではそうした伝統がない。20代のときに勢いでメディアを立ち上げてた今の30代は「オレたちどうする?」といった立場に立たされている。読み手としての今の30代は、どういったことをネットメディアに求めていけばいいのでしょうか。
またネットメディアもどのように報道していけばいいのか、といった点で迷走しているように感じています。例えば「朝日新聞であればこうした論調」「読売新聞であればこうした論調」といった特色をまだ出せていない。この記事は「特色が出ているなあ」と思って読んでいると、海外記事を翻訳したものだったりする(笑)。
既存メディアにも問題はたくさんある。その一方で、オルタナティブとして始めたネットメディアが、本当の意味でオルタナティブなことをやるためにはどのようにしていけばいいのでしょうか。
津田:ひとつの答えとしては『ナタリー』があるのではないでしょうか。彼らがやっていることは「ジャーナリズム」とは言えないかもしれませんが、全部自己資金で始めました。3人でスタートして、今は30人弱いる。年商は2億円ほど。
鈴木:芸能や漫画などの業界から、一定の信頼を得ていますよね。
津田:ですね。ネット媒体らしい“あおり記事”も、あまりありません。独自のカラーを打ち出し、運営することに成功していますよね。
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