欧州問題が取りざたされて米国株が大幅下落となったことから日本市場も売り先行、先物・オプションSQ(特別清算指数)算出に伴う売りもあって大幅安の始まりとなりました。寄り付きの売り買いが落ち着いた後は底堅さもみられたのですが、相変わらず買い気に乏しく、買いが続かず方向感に乏しい展開となりました。午後になっていったん下げ幅縮小となる場面もあったのですが、後が続かず結局大幅安となりました。
依然として欧州金融不安が根強いということで売られました。ECB(欧州中央銀行)総裁が国債の買い入れ拡大を否認したということが嫌気されたとしていますが、銀行に対する潤沢な資金供給を継続するということや利下げを好感してもいいのですが、国債買い入れ増額=更なる量的緩和まで期待していたことから失望されたということなのでしょう。ただ、冷静に考えて見ると、インフレを極端に恐れる欧州の性格上、特に足元の景気の良いドイツのことを考慮すると量的緩和の仕方もタイミングもかなり難しいと思います。
同じ「ユーロ」という通貨に投資をするということであればお金のもっていき場所とすれば、ドイツやフランスに持っていくのが「堅い」と考えるのは致し方ないことで、「ドイツにもっていくユーロ」と「ギリシャにもっていくユーロ」の価値が同じだから齟齬をきたすということなのです。資金的に必要としている国に資金を持っていくだけの要因を作るようにしなければ、根本的に欧州の金融不安は終わらないと思います。
ただ、今の時点ですぐにそうした施策をとることは難しく、現状でできることといえば、金利を下げてユーロを使いやすくする、そして資金の出し手として欧州の銀行が資金の心配をせずに資金を出せるようにしておくということでしょう。ですから、今の段階では銀行にお金が潤沢にあれば、特に大きな懸念とはならず、ここで慌てふためく必要もないのではないかと思います。
慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤」
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