一時大幅安となるも下げ渋り方向感に乏しい展開清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年12月08日 15時30分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
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明日の相場雑感

 米国株は底堅く堅調ですが、日本市場は相変らず目先の需給要因での動きばかりで昨日の大幅高の反動から売り先行となりました。それでも、先物・オプションSQ(特別清算指数)算出に絡む思惑や持高調整の売り買いが中心となって底堅く、大幅安となる水準からは下げ幅縮小となりました。前場の高値を抜ける場面もあったのですが、その水準からは戻り切らず、冴えない展開となりました。欧州金融不安やそれに伴う景気鈍化懸念、そして中国や豪州の景気鈍化も懸念されて最後まで買い切れないということなのだと思います。

 欧州金融不安ばかりが取りざたされており、首脳会合の結果も気にする向きが多くなっていますが、何度もこのコラムでも述べているのですが、本当のところ欧州の「何が」「どのように」まずいのかをしっかりと考えておく必要があると思います。例えば、「格下げ」にしても、なぜ「格下げ」となるといけないのか?ということも考えずに短絡的に「格下げ」→「債券も株も売られる」ということになるのだと思います。そして債券も株も売られるような状況であればユーロも売られることになるのですが、昨日などはユーロは案外底堅く、「格下げ」などほとんど影響がなかったように思われます。

 先日も欧州の銀行に対して各国が協調してドル資金の供給を行いましたが、要はここが肝心であって、以前から述べているのですが、欧州の銀行にお金があるかどうかが問題ではないかと思います。欧州の銀行がこれ以上リスクを許容できなくなると資金が不足し、資金の回収に走ると投機資金や投資資金がなくなり、市場全体が資金不足になるということなのです。これが実際に起こったのがいわゆる「サブプライムショック」「リーマンショック」であり、銀行が資金の回収をしなくてもいいようにしておけば、今すぐどうのこうのという問題ではないと思います。

 さらに、中国や豪州の景気鈍化懸念が欧州に起因しているということも、多分に心理的なものが多く、中国からの投資資金の引き上げということも今のところ心配はないと思います。まだまだ、中国の内陸部を含めた新興国のインフラ需要や生活水準の向上に伴う需要は大きく、世界経済の拡大は続くと思われます。円高の影響や政府の無策で相対的に日本の存在感が薄れる可能性は大きいのですが、世界経済という意味ではもう少し楽観的にみても良いのではないかと思います。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。
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