ドイツのソーラー産業が“苦戦”している松田雅央の時事日想(2/2 ページ)

» 2011年12月06日 07時59分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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曲がり角を迎えたドイツのソーラー産業

 そのQ-Cellsも、現在は経営の建て直しに必死だ。2011年第2四半期には損失が収入を上回り、ソーラーバレー全体でもおよそ3000人の雇用削減が検討されるなど、曲がり角を迎えている。

 ソーラーバレーに限らず、ドイツのソーラー設備メーカーが陥っている苦境の第1の原因は中国をはじめとする海外製品の台頭である。そこにリーマンショックによる2009年来の世界不況の影響も重なっている。

 ソーラーモジュールの生産量や売上高が大きく減っているわけではないのだが、世界市場の急速な成長からは置き去りだ。ここ数年でドイツが世界市場のシェアを落としたのに対し、中国は販売量を増加させシェアの大幅アップに成功している。

 ドイツにとって不利なことに、ソーラーモジュールの小売価格下落は激しい。ドイツにおいてソーラー発電設備(発電出力1キロワットアワー)の価格を比較すると、2005年末は約5000ユーロ(52万円)だったのに対して、2010年には2400ユーロ(25万円)と半分以下に下がった。小売価格の値下がりはメーカーにとって織り込み済みだったはずだが、生産コストの高いドイツが不利になるのは間違いない。今後、ドイツのメーカーも海外生産へシフトすると予想され、例えば電機メーカー・ボッシュは約5億ユーロを投じてマレーシアにソーラーモジュール工場建設を計画している。

 ソーラー産業の生き残りは高付加価値製品の開発が鍵を握る。しかし、ドイツのソーラー産業はこれまで研究と開発への投資が十分でなかった。専門家によると研究と開発への投資は売上高の2〜3%にとどまり、機械産業など比較して顕著に低い。

 輸出だけでなく、国内のクリーンエネルギー投資(特にソーラー設備)についても中国の伸びは顕著だ。2009年以降、世界で最も投資しているのは中国で2010年に385億ユーロ。ドイツの291億ユーロ(3兆円)、米国の240億ユーロ(2兆5080億円)を引き離している(PM MAGAZIN 06/2011)。クリーン・エネルギー投資は中国に続け! という時代の到来だ。

ソーラーモジュールの売上げと世界市場に占める割合

2004年 2010年
中国 17億ドル 363億ドル
7% 45%
ドイツ 168億ドル 169億ドル
69% 21%
(出典:Q-Cells)
(出典:PRTM)
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