ガンダムからあの花まで――西武鉄道&アニメの地域活性化戦略(2/5 ページ)

» 2011年11月30日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

プロジェクト開始は4年前

小野打 西武鉄道沿線にアニメ制作会社が立地していて、アニメ資産もあるのではないかということで私は相談を受けて、日本動画協会とのコラボレーションにまでこぎつけていきました。

 ただ、西武鉄道では高田馬場に手塚プロダクションがありますし、西武新宿線沿線にはサンライズやトムス・エンタテインメント、西武池袋線沿線には東映アニメーションがあります。さらにもっとたくさんのアニメ制作会社があるのですが、それらの企業が作った作品を均等に扱っていきたいと思いました。

 しかし、アニメ作品を扱われている人はよくご存じだと思うのですが、キャラクターが混在するようなことは絶対にあり得ないんです。それをどうやって解決していくかが一番難しかったですね。具体的にどのように進んでいったかお話しいただけますか。

野田 2007年に契約を締結してから、すぐにイベントや企画が立ちあがったわけではありません。半年ほどかけて、社会貢献というテーマでいろんな施策を検討してきました。

 最初に実施したのは「かんきょうキッズ・ふるさとウォーク」(2008年4月19日)というイベントです。自然豊かな石神井公園を舞台として、アニメキャラクターを活用した環境についてのクイズラリーを行いました。

 2つ目は「切符deアート」(2008年10月19日、20日)。私たちが鉄道会社ということで、回収済みのキップを使って、モザイク壁画を作りました。手塚プロダクションに協力していただき、沿線の小学校で校外授業ということで実施しました。

切符deアートの様子

 3つ目に、子ども向け環境マガジン『アニッコ(Anime&Eco)』にひもづいた、子ども応援プロジェクトです。子どもたちに職業体験をしてもらうというもので、駅員や乗務員、プリンスホテルの受付など西武グループ挙げて行ったイベントで、アニッコの記者として取材体験も行いました。

 また、沿線の魅力を十二分に伝えるため、今年4月に「SEIBUでいく アニメゆかりの地ぶらぶら散歩」という観光マップを発行しました。5万部を用意していたのですが、2カ月ほどでなくなってしまいました。

SEIBUでいく アニメゆかりの地ぶらぶら散歩

小野打 『アニッコ』という冊子がアニメを活用した西武鉄道の地域貢献活動の柱になっているということなのですが、ご紹介いただけますか。

野田 『アニッコ』では沿線自治体やNPO、駅前商店街などとタッグを組んで、日本動画協会会員社のキャラクターを使って、いろんなエコ情報を紹介しています。エコ情報は、「循環型社会」「低炭素・脱フロン社会」「生物多様性確保」「安全社会」という大きく4つのテーマです。

 2008年12月に創刊して、創刊号の表紙はケロロ軍曹でした。制作会社のサンライズの協力を得て、ケロロ軍曹のキャラクターを使い、杉並区を中心とした地域の環境について紹介しました。第2号では名探偵コナン、第3号ではねぎぼうずのあさたろうが主役で、今年6月に発行した第10号記念号では鉄腕アトムが登場しました。

『アニッコ』バックナンバー

小野打 毎号毎号違うキャラクターが、作品の制作会社がある場所や作品ゆかりの場所、すべて西武鉄道沿線なのですが、その土地のエコ情報について紹介していくということですね。

野田 最新号では『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、通称『あの花』が主役となりました。『あの花』は今年4月から6月まで、フジテレビのノイタミナ枠で放送された全11話の青春アニメです。西武鉄道沿線の埼玉県秩父市を舞台設定のモデルにしています。

『あの花』が主役となった『アニッコ』最新号

 最新号は5万部制作して、9月23日に発行しました。駅に4万部を置いたのですが、今までにないはけぶりで、2〜3週間でほぼ全部なくなってしまいました。

 『アニッコ』は小学校低学年向けに、分かりやすく作っています。しかし、最新号は“大きなお兄ちゃん”も含めて、さまざまな年齢層の人々に手にとってもらえたので、西武鉄道や日本動画協会の活動を知っていただけたのではないかと感じています。

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