高まるユーロ解体リスク、回避のポイントは3つ藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年11月28日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 日本では大阪ダブル選挙が注目を集めていたが、結果は大阪維新の会の圧勝。これで大阪都構想はいよいよ前に進むのだろう。本当に改革が進むのかどうかは、もう少し時間をかけて見なければ分からない。それでも既成政党が右から左までほぼ「賞味期限切れ」になっていることだけは明らかになった、と言うべきかもしれない。どのような改革であれ、現状が行き詰まっているように見える以上、改革は必要なのである。

 同じことは恐らく欧州にも言える。先週末、イタリア国債の10年物の利回りが7%をはるかに上回り、今週、ドイツやフランスがどのような手を打ってくるかが注目されている。EU域内第3位の経済大国イタリアがもしデフォルトということになれば、それこそ世界の金融に大収縮が起こることは避けられない。そうなったらリーマンショックの再来というよりも1929年の金融大恐慌の再来である。

 17カ国で使用する統一ユーロがもたなくなるのではないかという見方も強まっている。英エコノミスト誌最新号(参照リンク)では「数週間のうちにユーロ圏が解体するリスクは非常に高まっている」と書いている。

 もっともユーロ圏が解体ということになれば、その代償も高すぎるのかもしれない。それぞれの国が自国通貨、例えばギリシャはドラクマ、イタリアはリラ、に戻ることになる。その時、ユーロとの交換レートをいったいいくらにすべきなのか。安く設定すれば、輸出競争力(それに観光客へのアピールも)は回復できるかもしれないが、同時に国民が持っていた現金資産は事実上「目減り」してしまうだろう。逆に高く設定しすぎれば、競争力を回復させることもできないから、国民の金融資産は守られても、経済はいっそう厳しくなる。

 もちろんユーロ圏以外への影響も決して小さくはない。外貨準備としてユーロを保有している国(日本もそうだが中国はユーロの保有が多いとされている)は、ユーロが崩壊すれば最大の被害者だ。中国はEUへの輸出も多いだけに、その影響も計り知れない。ユーロ圏周縁国の国債だけでなく、中核国の国債も一時的には相当値下がりするだろうから、世界中の銀行で損失が発生する。そうなったら銀行は、自己資本比率を維持するために、好むと好まざるにかかわらず、「貸し渋り、貸しはがし」に走る。銀行が一斉に国債の売りに回ることでユーロ圏の国債はさらに売られ、さらに値下がりする。悪循環だ。

 もちろん債務の急増に悩む米国も無事ではいられないし、対GDP(国内総生産)比では先進国中最悪の公的債務を抱える日本も無事でいられるはずがないのである。

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