日本人以上の就職難――ベトナム人留学生、日本で就活をする郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年11月24日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 2年はぼんやり、3年で焦り出し、4年で走り出すものなーんだ? それは就活。

 中途半端に大学をドロップアウトしていた私にも、それは気が進まないものだった。自分に向く仕事は何? 会社とはどんなところ? そこで働く自分の姿が想像できなかった。だから、就活に身が入らない。ふらりと大企業の説明会に行く。集団面接でしっかり落とされる。自分がイヤになった。

 だが、今はもっときつい。文部科学省と厚生労働省の調査によると、2011年10月1日時点の大学4年生の就職内定率は59.9%。昨年より改善傾向とはいえ厳しい。再来年卒業の3年生の多くも、内定にたどり着こうともがいている。

 日本人学生でこの厳しさなのだから、留学生にとってはなおさら厳しい。日本語と日本社会という2つの壁が立ちはだかるからだ。

 そんなベトナム人留学生の就活支援を、ひょんなことから盟友MAKIKOさんと私は夏から行うこととなった。就活講座の講師として、どこにもない内容を教えている。

講座実施風景(撮影:MAKIKO)

日本語で雑談・質問・討議ができるようになることが目的

 カリキュラムは、ベトナムと日本をまたがる事例テーマの講義と討議、両国の歴史や文化比較、就活に役立つトピックス、有望会社の紹介や悩みごと相談までと幅広い。1都3県の大学や大学院に通学する彼らが、毎週都内の会議室や私の運営するギャラリーに集まる。

 1回の講義には5〜10人が参加。事例テーマは「PHO(フォー=ベトナムの米粉の麺)」「コーヒーと貿易」「下着」「陶磁器」「面白いIT」など、実社会の事業や消費がテーマ。壇上から教える講義ではない。イスを寄せ合って語り、意見を言い、笑い、ホワイトボードで発表する。無味乾燥な会社研究や面接スキルアップセミナーではない。もっと本質的なものだ。

 講座の目的は、日本語で雑談・質問・討議ができるようになること。両国の経済・企業・消費者・文化について浅くても広い知識を持ち、自分の中で再構成し、“アイデアを入れて”語れるようになること。面接で経営者に「君いいこと言うな、採用!」と言わせるのがゴールだ。

 そんなことができるのか? 結論から言えばできる。国費留学生の彼らは頭脳は明晰。躍動する若い国(CIAによると平均年齢は27.8歳、ちなみに日本は44.8歳)で明るく育った。目がキラキラしている。「給与水準の高い日本で働いてしっかりとお金を貯め、いずれ母国のために飛躍したい」と志が高い。

 MAKIKOさんと付けた講座のコードネームは“フォー・プロジェクト”。その背景と成り立ちをご紹介しよう。

講座実施風景(撮影:MAKIKO)
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