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» 2011年11月21日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:ドイツとフランスが対立、欧州危機は誰が救うべきか? (1/2)

ギリシャの債務危機に端を発する欧州危機が収束する気配が見えない。その一因は、国債の買い入れをめぐって、ドイツとフランスの意見が対立していることにある。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 欧州の状況は一向に落ち着かない。イタリア国債の利回りは、ECB(欧州中央銀行)が少し買い控えればあっという間に7%という「危険水域」に近づくし、一時期は小康状態だったスペインも6%台でじりじりと水準を上げている。そればかりかトリプルAの格付けを持っているフランスの利回りもじりじり上がり、投資家が神経質になっている様子がうかがえる。

 こうした中で、先月末に10時間というマラソン首脳会議で決まった包括的救済案も、その効果に疑問符を付ける声が強まってきた。とりわけ問題なのは、EFSF(欧州金融安定基金)の資金枠強化だ。10月末には1兆ユーロ(=約7600億円、現在は4400億ユーロ)への拡大が決まったが、資金を出してくれると思っていた中国の反応がやや期待はずれ。中国としてはEFSFに直接出すのではなく、IMF(国際通貨基金)を通じて出すという。つまりは中国はIMFへの拠出額の増加を通じて、国際政治の場での発言力を強化するということだ。

 中国の台頭を警戒する米国にしてみれば、欧州がぐずぐずしているために「中国ファクター」という余計な問題を抱え込むことになるだけに、欧州でさっさと片付けろと言わんばかり。しかしことはそう簡単には運ばない。

 まずはドイツとフランスの対立。フランスは「イタリアやスペインなどの国債をECBが買うべきだ」と主張する。フランス自身の国債が値下がりし、トリプルAが危うくなりつつあるからだ。つまりEFSFにフランスが巨額の出資をすれば、格下げリスクが大きくなるという事情がある。

 これに対してドイツは「中央銀行がもし国債を事実上無制限に買い入れるようなことになれば、ECBは市場の信用を失って、ユーロ圏そのものが危機にさらされる」と主張する。ドイツの中央銀行ブンデスバンクのバイトマン総裁はその急先鋒であり、現在、ECBが限定的に実施しているイタリアなどの国債買い入れも即刻中止すべきだという。

 中央銀行は銀行への「最後の貸し手」とされるが、国家への最後の貸し手になってはならないというのが大方の中央銀行マンにとっては大原則。それこそハイパーインフレへの道であることは、世界の歴史が示すところだからだ。ECBの総裁に就任したばかりのドラギ氏も「国家債務危機への対応は各国政府がやるべきだ」という立場を強く主張している。

 もっとも危機がさらに深化してくれば、米国や中国は「欧州の危機は欧州で解決すべき」という圧力をかけてくるだろうし、EFSFの資金枠拡大はますます難しくなる。すでに英国のキャメロン首相もドイツのメルケル首相との会談で「すべてのユーロ圏の機関はユーロを支え、守るために必要なことをすべきである」と主張し、ECBがイタリアやスペインの国債を大規模に買い入れるよう促した(もちろんメルケル首相はこの要請を拒否している)。

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